新連載のタイトル案
コント
コント『新連載のタイトル案』 作:第三字宙 約8分(約3100文字)

登場人物:3人
タク・フクタ(ちょっと大御所の漫画家)
林田(若手の編集者。マーケティング脳)
フクタカエ(漫画家のアシスタント兼配偶者。ほんわか天才)

漫画家の仕事場。漫画家のフクタと編集者の林田がいる。

林田「マンガデー編集部の林田です、本日からよろしくお願いします」
タク「漫画家のタク・フクタです。よろしくおねがいします。新人さんって聞いてるけど・・・漫画雑誌は初めてなんだって?」
林田「はい、右も左もわからず・・・“データ分析”は得意なんですが」
タク「漫画にデータ?」
林田「はい、最近は“タイトル分析AI”がありまして」
タク「(苦笑)AIかぁ・・・」
林田「先生の新連載、タイトルでバズらせましょう!」
タク「タイトルでバズらせる?」
林田「最近のヒット作、全部“タイトル勝ち”なんですよ! 内容はあとで整えればOKです!」
タク「内容より、タイトル先行なの?」
林田「そこで、いただいたネームからタイトル案を考えました・・・”幼馴染が実は未来から来た自分だった件”。トレンドタグが立ちそうです!」
タク「お、おぉ・・・、なるほど?」
林田「もうちょっとタイムリープ感が欲しいので「〜時間を超えて自分と付き合うことになった少年の物語〜」も付けて検索に引っかかるようにしましょう」
タク「漫画というより広告コピーだな」

アシスタントのフクタカエが入ってくる。

タク「(カエを手で示して)妻です。アシスタントもやっててね」
カエ「フクタカエです。よろしくお願いします」
林田「はじめまして、林田です! 今ちょうど新連載のタイトルを、」
カエ「うふふ、どんなですか?」
林田「”幼馴染が実は未来から来た自分だった件〜時間を超えて自分と付き合うことになった少年の物語〜”です!」
カエ「ふふ・・・」
タク「(否定されるの予測して)はは。まぁね、いくらタイトルが長いのが流行ってても、長すぎて、ねぇ?」
カエ「うふふ、うん、素敵!」
タク「(即迎合して)うん、そう! 素敵だよね」
カエ「それって"自己愛のメタファーとしての時間SF"でしょう?」
林田「え・・・はい!?」
タク「うん! そうそう、そうね。メタファーね」
カエ「時間を超えた自己対話ということね。過去を赦すための旅」
タク「さ、さすが僕の一番の読者!」
林田「なるほど! ではサブタイトルに『〜自己受容と癒しの時間旅行譚〜』も加えましょう」
タク「追加する方向なの?」
カエ「うふふ。でもこれ先生の構想だと、少年と少女のラブコメでしょう? 少年が自分と付き合うって・・・(考え込み)あ、でも“未来で性転換して戻ってきた”なら、理屈は破綻してるけど面白いわね」
林田「乗りましょう! “性転換”でジェンダー多様性をカバー!」
タク「いや、そこは”男の娘”っていう設定にしようかと・・・」
カエ「うふふ、でもそれって、ジュディス・バトラー的展開ね」
タク「誰? カードバトラーなら知ってる・・・」
カエ「つまり“ジェンダーと自己同一性”の物語」
林田「難しいけどバズりそう! “〜ジェンダーを超えた自己同一性の探求〜”を追加します!」
タク「また追加するの!?」
林田「先生! 今、ピンときました!「〜実は平行世界の別人だった可能性も否定できない件」!」
タク「そのピンはどこから来たの!?」
林田「"考察系YouTuber"を狙います。謎が多い方が解説動画が伸びるんです」
カエ「うふふ。平行世界なら、同じ人物が複数存在するわね」
林田「マルチエンディングの伏線ですね!」
タク「・・・ねぇ、ジャンルはラブコメだよ?」
林田「“癒しのSFダイバーシティ群像ラブコメ”に進化しました!」
タク「キメラみたいな進化をさせないで」
カエ「うふふ。平行世界まで含むなら、“観測されるまで確定しない”構造にできるわね。量子的。」
林田「量子きた! じゃあ“〜量子論的観測者効果により存在が確定しない件〜”です!」
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