メリーさんは羊
メリーさんは羊

メリー
キツジ

板付きで、白いモコモコの服を着ているメリーさんがいる。無言。出オチみたいな種類の笑いが起きたら有難い。

メリー「メリーさんはひつじーひつじーひつじー、メリーさんはひつじー、可愛いねー」

メリー、淡々と歩き、舞台前面に座る。

メリー「好きな食べ物は、ラム肉です。」

そこに、執事のキツジがやってくる。

キツジ「メリーお嬢様。お食事の時間です。」

メリー「ラム肉?」
キツジ「マトンです」
メリー「やだ臭いー」
キツジ「何でも食べないと、ちゃんとした大人になれませんよ」
メリー「ならないもーん」
キツジ「なってもらわねば、困ります。」



メリー「執事風情が…」キツジ「ワタクシ、執事の、キツジです。」
メリー「早口言葉みたいな名前しないで」
キツジ「自分ではどうしようも。」



メリー「ねぇ、執事のキツジ。羊毛が伸びてきたの。刈ってくださる?」
キツジ「お嬢様。とても可愛らしいですよ。フワフワで、モコモコで」
メリー「ふわもこが好きなの?執事のキツジ」
キツジ「はい。可愛らしい女性が、ふわもこなのは、男のロマンの一つでございます。」
メリー「何個あるの?その、男のロマンとやら?」
キツジ「そうですねぇ。世界には七つのロマンがございまして。そのうちの一つが、可愛い子ふわもこでございます。」
メリー「ふーん。世界ってつまらないのね。」
キツジ「つまるもつまらないもそれが世界です。」
メリー「世界はメリーのものなのになぁ」
キツジ「あなたのものですよ。少なくとも、このお庭という世界は。」
メリー「狭いじゃん。草とか生えてんじゃん。喰うぞ。はむはむ喰うぞ。」
キツジ「えぇ、お食べになってください。こちらの草には栄養がたっぷりと入っております。」
メリー「肥るじゃん。」
キツジ「ふわもこは少しぐらい肥えてらっしゃった方が宜しいです。大体にして最近の世界は痩せすぎです。健康的な美しさ。そのようなものが軽視されてる気がします。」
メリー「しゃーないじゃん。メディアがそうさせるのよー。メリーさんは可愛い〜痩せてて可愛い〜メリーさんは可愛い〜痩せてるね〜。」
キツジ「いいですかお嬢様。健やかなる生活こそ、貴女のお仕事なのですよ。さぁ、草をお食べになってください。」
メリー「はいはい。はむはむ。ねー、草飽きるんだけど。」
キツジ「塩と、オリーブオイル、持ってきますか?」
メリー「そこはヘルシーなのね」
キツジ「化学調味料はなるべく使用しない。旦那さまとの約束です。旦那さまはいつでも、お嬢様の健やかなる健康と、伸び伸びとした精神を祈っているのですよ。感謝しなければ。」
メリー「はいはい感謝〜。ねぇ、健やかなる精神っていうならさ、ここから連れ出してくれて良くない?」
キツジ「それは出来ません。こちらの庭が、私達の世界です。世界の外に行く時…それは、生きることを辞める時なのですよ。」
メリー「ふーん。辞めちゃおうかなー。」
キツジ「お嬢様、ワタクシを困らせないでください。」
メリー「ふふ、執事のキツジが困ると、退屈が少し埋まるわ。」
キツジ「そうですか、じゃ、困りますね。うわぁ…困りました…」
メリー「ポーズじゃ、や。本当に困って。のじゃないとメリーは見抜くの。そんなに単純じゃないわよ。」
キツジ「これは失礼。」
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