金木犀の香りがする頃に
金木犀の香りがする頃に
聡
未希
暗闇の中、女性の声がする。
「ね、また、会えたら、いいね_」
明かりがつく。
聡、酷く散らかった部屋で、起きる。
ボサボサの髪、汚れた服
近くにあったお酒を手に取り、飲む。
タバコに火をつける_
未希、歩いてくる
未希「ほら、今日は仕事じゃないの?」
聡「_今日は休むよ…」
未希「そんなこと言わないで。ね、せっかく見つけた仕事でしょ?」
聡「ほっとけよ!」
未希「…!ごめんなさい…」
聡「…いや、いいよ、怒鳴って悪かった…」
未希「ううん。…ね、具合、悪いの?」
聡「別に…良くも悪くもねーよ…」
未希「そっか。」
聡、タバコを吸い
聡「…いつまで居んの」
未希「さぁ…」
聡「別にいいけどさ…」
未希「ごめん…」
聡「なんで謝んだよ…」
未希「ううん…」
聡「謝るならさぁ…謝らなくていいようにしてくれたらいいんじゃねぇかなぁ…」
未希「ごめん…」
タバコを消して
聡「もういいよ」
酒を飲み、寝転がる
長い間
未希、外に目をやる
未希「…ヒグラシ、鳴かなくなったね。」
聡「…」
未希「もう、秋かなぁ」
聡「…」
未希「ね。覚えてる?私、聡と喧嘩してさ、家出しちゃったの。」
聡「…」
未希「あの時、ヒグラシがね…ずっと鳴いてたの。でも、なんかね、急に聞こえなくなって_全部_驚くほどね、静かな世界に急に飛ばされたみたいになって_気付いたら、隣に居てくれたね。」
聡「…忘れたよ、そんなの…」
未希「ううん、あの頃はきっと…あの日のヒグラシみたいに、ずっと鳴いてたんだと思う…」
聡「知らねぇよ…。なんか帰ってこないからさ…。」
未希「ね、心配してくれた?」
聡「…」
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