幽霊なんか怖くない
舞台は廃墟。
男A 十文字孝雄
男B 狭間行俊
女A 水野杏里
幽霊 幽霊さん
通りすがり 今村圭新
注意 今村を除き、足音はなるべく立てない。男A、男B、女Aはロングスカート着用。
照明はスポットライトのみ。懐中電灯を使用している体で進行。
水野「ねぇねぇ、本当に進むつもりなの? やめようよぉ」
十文字「何を言ってんだか。まさか、今更怖気付いたんじゃないよな?」
水野「いや、そういう訳じゃないけれどもさ。なんか冷やかしみたいで嫌なの」
狭間「大丈夫ですよ。堂々としていればいいんです。ほら、胸張って」
十文字「行俊の言う通りだぜ? 大したもんなんて出てこないんだしよ」
水野「それはそうだけどさぁ」
スポットライト移動。狭間が振り返る。
水野「どうかしたの?」
狭間「いえ、少し気配を感じたもので」
十文字「そうか? 俺は何も感じんがな」
水野「ねぇ! やっぱりやめようよぉ!」
十文字「杏里」
水野「……何?」
十文字「チームを結成したとき、俺が言ったことを覚えてるか?」
水野「うん。まぁ、覚えてるよ」
十文字「行俊、お前は?」
狭間「もちろんですよ。誰一人置いてかない、このロングスカートにそう誓われました」
十文字「その通りだ。だから……」
水野「みんなで外に出よう!」 十文字「一緒に進むぞ!」
狭間「ま、とりあえず進みましょうよ」
水野「行俊まで言うのかぁ」
狭間「面白そうなので」
十文字「多数決で進むに決まりな! ほれ、早く行くぞ」
狭間「ですね」
水野「仕方ないなぁ」
幽霊「廃墟って怖いよなぁ。わかるぅ」
水野「……ねぇ、今の誰の声?」
幽霊登場。スポットライトを幽霊に。
幽霊「えっ、あんたら俺の声が聞こえるのか?」
狭間「なるほど。さっき感じた気配はあなたですか」
幽霊「なっ、なんだその白けた反応!」
十文字「悪いな。こいつは反応が薄いんだ」
幽霊「いや、あんたもな! ほれ、よく見ろ。俺の足! 足がないのに、立ててるだろ! 太ももの辺りから下が透けてるだろ!」
狭間「まだ若いのに、辛いですね」
幽霊「哀れむな! 怖がれ!」
水野「やっぱりやめた方が良かったんだってぇ。出ちゃったじゃん」
幽霊「うわ、なんだこの集団! 足が透けてるのに何の反応も示さない!」
十文字「なんだ? 承認欲求が強いのか?」
狭間「現代の幽霊って承認欲求が未練で成仏できないとかありそうですよね」
水野「ねぇ、会っちゃったよ? どうするの?」
幽霊「霊に遭遇しておきながら、会っちゃったで済むのかよ」
十文字「済む」
幽霊「済むのかよ。てか、なんでお前ら全員ロングスカート履いてるんだよ!」
狭間「チームのトレードマークなので」
幽霊「どんなチームだよ!」
水野「それより、幽霊さん幽霊さん。名前はなんて言うの?」
幽霊「俺の名前か? 別に良いが……」
十文字「待て! 当てたい!」
幽霊「本当、お前らなんなんだよ」
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