ヒガナグチグチ
ヒガナグチグチ


セツナ
ヒナ
リッカ
タジマ

時計の音がする
舞台中央にスッとサスペンションの灯りが落ちる。
セツナがそこにいる。

セツナ「努力が必ず実ると言うのなら、私はもっとマシな高校に通っているだろう。日頃の行いが人間関係を決めるのなら、私はもっとやる気のある人達に囲まれているだろう。自らを特別だと思うのが思春期特有の病なら、私はもれなくそれだろう。代わり映えの無い日々、消費される時間、何者でもない自分。待っているのは、量産型の未来だろう。そういうもんだよ、と大人たちは言うが、受け入れられないのもまた、非凡の証なのであろう。退屈。退屈。退屈。私は、この退屈に抗いたくて、演劇部に入った。しかしそこにあったのは、新たな種類の退屈であった。」

灯りが全体に広がる。
部員、バラバラに各々好きなことをしている。
Switchをしてるタジマ。
本を読んでるリッカ。
スマホを弄ってるヒナ。
セツナ、周りを見渡し。

セツナ「演劇部に入ったのは、退屈になりたいからではない。変人になりたいわけでもない。私は普通であり、普通のまま、退屈を埋めたかったのだ。にも関わらず、私はまた選択を誤ってしまった。あぁ、退屈である。酷く、退屈なのである…。」

タジマ「なんの台詞?」
セツナ「叫びよ!ねぇ!何で、みんな、稽古しないの!?」
リッカ「稽古ったって、ねぇ。」
ヒナ「やること無いじゃん?」
セツナ「無くないよ!??基礎トレとかあるでしょ!滑舌とかストレッチとか」
タジマ「あめんぼ甘いよあいうえあー」
ヒナ「オフぐらい楽にしようよ。大会で燃え尽きてんだよ」
セツナ「尽きる程燃えてないじゃない!?地区大会突破も出来てないじゃない!!」
リッカ「運が悪かったよね。」
タジマ「そうそう」
ヒナ「相手が悪かった。あたしたちは全力を尽くしたよ。」
セツナ「全力だぁ〜??」
ヒナ「なによ」
セツナ「脚本出来たのが本番1週間前。必死で台詞を入れた1週間。本番ズタボロ。全力って、その台詞いれの1週間のことを言ってる??」
ヒナ「作家はね、インスピレーション湧かないと書けないのよ。だからこうやって文明の力(スマホ)を利用して、世界からあらゆる情報を集めてるんじゃないの。」
セツナ「言い訳は良くない!言い訳がいいわけない!あんたもゲームばっかやってんじゃないわよ!(取り上げて)」
タジマ「(取り返して)家でやってると怒られんだよ。勉強しろってさ…変なこと言うよな笑」
セツナ「普通のこと言ってるよ!??親御さんのが正しいよ!??」
リッカ「セツナさぁ。正論が多すぎるよ。熱すぎ。熱ければ勝てるの?演劇って。」
セツナ「熱ければ勝てるとは限らない。でも、熱くなるぐらい何かを考えないで勝てるとも思わない。」
タジマ「カッケェ〜(ひっくり返る)」
リッカ「…この間の大会でわかっちゃった。なんか、別に負けても悔しくないんだなぁ、って。」
セツナ「…本気でやってないから悔しくないんじゃない!」
リッカ「だからさ、本気の出し方とか今さらよくわかんないなぁ、って、思ったの。」
ヒナ「言える」
タジマ「熱いのとか、流行んないしな。」
セツナ「じゃ、何??皆はここに何しに来てるの??演劇しに来てるんじゃないの??」
ヒナ「セツナは?」
セツナ「え?」
ヒナ「セツナは何でここ来てるの?どう考えてもやる気無いじゃん、皆。」
セツナ「演劇部一つしかないんだから、演劇やろうとしたらそうなるじゃん。」
ヒナ「でもさ、演劇やりたいだけなら社会人劇団とかもあるじゃん?わざわざこんなやる気ゼロの演劇部にしがみつかなくてもさ…」
セツナ「そりゃそうなんだけど…」
タジマ「好きなんだよ、俺たちのこと」
リッカ「そうそう」
セツナ「嫌いではないけど、ムカついてはいるのよ」
ヒナ「だってやる気でないんじゃしょうがないじゃん。どうしようもないよ。」
1/5

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム