クローバー
「クローバー」
《登場人物》
幸枝
辺見
《登場しない登場人物》
弟(アキヒト)
成年後見人
民生委員
幸枝の甥
シーン1(幸枝の家)
幸枝、ギターを持ち、スピッツ・チェリーを弾き語り。
幸枝「いつもありがとう。ごめんなさいね、下手なものを聞かせて。これね、主人が選んだ曲なの。これなら弾けるようになるか
なって。若いわよねあの人も。・・・ああ、帰るの?お疲れさま。」
チャイム音。
幸枝「あら、主人が帰ってきたのかしら?」
幸枝、立ち上がる。誰かが来た様子。ギターを置きながら
幸枝「・・・あら、いらっしゃい。しばらくね。つたないものを聞かせてしまったかしら?・・・そう言ってもらえるとありがたいわ。練習してもう少し上手になったら、主人と一緒に演奏したいと思っているの。でも、いつになるかしらね。」
幸枝、庭を見る。
幸枝「あら、シロツメクサ。私ね、花の部分よりも葉の部分、クローバーの方が好きなの。・・・いいえ、四つ葉のクローバーじゃなくて、三つ葉でいいの。三つ葉の花言葉がね「愛・希望・信頼」。小さな幸せを寄せ集めたような言葉よね。私が死んだら、色とりどりの百合や菊よりシロツメクサや三つ葉のクローバーに囲まれたいわ。・・・それで?今日は何のおはなしだったかしら?え?そうなの?ええ、是非お願いしたいわ。ありがとう。待った甲斐があったわ。あ、ごめんなさい。お茶も出さないで。もうすぐ主人も帰ってくると思うの。だから・・ああ、そう。うん。また今度ね。」
幸枝、見送るとギターをカバーの中にしまう。雨と雷の音。
幸枝「あら?雨。ああ、だんだん強くなってきて。・・・あら、嫌だ。天井から雨漏り・・・。」
幸枝、ぞうきんを取り出し拭き始める。が、水は止めどない。
幸枝「ああ、もう。次から次へと。」
幸枝、床をこすり続ける。ふと手を止めて
幸枝「そういえば、あの人傘を持って行ってないわよね。持って行ってあげなきゃ」
外に出る。雨の音、強くなる。
幸枝「あらあら、結構降っているわね。少し寒いし、帰りは二人でどこかで温かいものでも食べながら帰りましょう。傘、どこに置いたかしら?」
幸枝、はける。雨の音しばらく続く。
シーン2(幸枝の家・辺見視点)
LINE通話音。ちょっと長め。
辺見「(声)もしもし?何?仕事中なんだけど。え?あーそう。ゆきちゃん、実家に帰っちゃったの。・・うん・・・うん・・・
ねえ、それ、今じゃなきゃだめ?緊急事態って言われてもね。あん?嘆きたいのはこっちよ。アホな弟のバカな話を聞かされて。何がダメなのかって?あとでよーーーく説明してあげるわよ。じゃ、仕事中だから。」
電話切る。
辺見「アホなのか。」
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