動争会
動争会”   脚本 清水英太郎

登場人物(性別は自由です)
八島        日本人 
エリザベス  イギリス人
イワン   ロシア人
マクドナルド  アメリカ人


○    とある高校の同窓会、気弱そうな青年八島が手持無沙汰な様子でひとり佇んでいる
    ざわめき CI
八島   「いやーついに来ちゃったな同窓会。卒業してもう何年だろう、懐かしいな。みんな元気にしてるかな、僕のこと覚えてるかな」
エリ    「Excuse me?」
八島    「はい? だれだろうこの外国人」
エリ    「Hi Yashima.do you remember me?」
八島    「えーとその、ハロー」
エリ    「Oh shit……あー、私だよ私、忘れたのかい?」
八島   「ふ、ふーあーゆー」
エリ   「いやいや、Queens Englishはもういいよ、忘れたのかいほら、委員会一緒だったろ」
八島    「もしかして、エリザベスさん」
エリ    「ミスターヤシマ、いや久しぶり。キミはいつまでたっても英語が下手だね」
八島    「僕に舌は一つしかありませんからね」
エリ    「お、言うようになったじゃないか」
八島    「僕だって高度に成長したんです。いつまでも昔のままじゃありませんよ」
エリ    「確かに、やんちゃだったキミがすっかり好青年って感じだね、ホラ覚えてるかい?特攻服に鉢巻巻いてさ」
八島   「や、やめてくださいよ昔のことは」
エリ   「I’m joking !!! 冗談だよ」
八島    「ハハハ、まあでも、僕が変わったのは全部マクドナルド君のおかげなんです」
エリ   「マクドナルド?」
八島   「ほらいたじゃないですか、おっきい会社の跡取りの」
エリ   「ああ、マッキーね。今は随分出世して羽振りがいいらしいが…見当たらないな。あの目立ちたがり屋が居れば気づかないはずはないんだが…」 
八島    「そういえばいませんね、会ったらサンフランシスコのお礼がしたかったのに」
エリ    「どうせ重役出勤だよ、じきプライベートジェットで飛んでくるさ…にしてもここの紅茶は不味いな、どこの銘柄だ」
八島    「チェンくんの実家の農場らしいですよ、ここだけの話、粗悪品だって噂です」
エリ    「まったく馬鹿な奴だ、またアヘンでも売りつけてやろうか」
八島    「それ冗談になりませんよ」
エリ    「おや失敬失敬、だが彼のは自業自得だよ、スズメを殺せば害虫が減るとでも思ったのか?まったく劣等人種はこれだから」
八島    「まあまあまあまあ、それくらいで、ほら、開会式が始まるみたいですよ」
イワン   「あー、あー静粛に」
     ざわめき F.O
BGM   (インターナショナル)C.I
イワン   「親愛なる同志諸君、私立三国(みくに)国際高校の同窓会に集まった諸君に心より感謝する。司会を務めるイワンだ。今日はかつての学友が集う記念すべき日。だがこの祝祭に際して空気を読めん資本の犬(キャピタリスト)もいるようだ、その筆頭である元生徒会長のマクドナルドより、祝電を預かっている」
BGM   (インターナショナル)C.O
BGM   (星条旗よ永遠に)C.I
マク   「(英語訛りで)“ごめん、同窓会には行けません、いま、ベトナムにいます。この国を南北に分断する内戦を私は戦っています。本当はあの頃が恋しいけれど、今はもう少しだけ、知らないふりをします。私の落とすこのナパーム弾も、きっとこの国に正義と平和をもたらすから……”」
八島   「どうりでいないわけだ」
エリ    「マクドナルドもご苦労なことで」
八島    「司会がイワン君だからボイコットしたのかもしれませんよ、ほらあの二人仲が悪かったですし」
エリ   「確かに、マクドナルドが幹事だった成人式もイワンのやつは来なかったな」
八島    「イワン君もすごい勢いですけど、あんまりよくない噂も聞きますからね」
エリ    「確か奴の会社で“イワンは馬鹿だ”って騒いだ社員を解雇したらしい」
八島    「名誉毀損ですか、にしてはいくらなんでも重すぎるような」
エリ    「いや、社内機密漏洩罪だそうだ」
二人   「「……」」
イワン   「おや?どうしたんだい二人とも」
エリ    「っ」
八島   「イ、イワン君、ただの雑談ですよ」
イワン   「はっはっは、小声で噂話とは感心せんな。ちょうどここに北のウィンターランド行きの片道切符があるのだが、二人でどうかね」
エリ    「冗談だろう」
八島    「遠慮なく遠慮しておきます」
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