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歯医者

『歯医者』

キャスト
北島　　奥歯を痛めたので歯医者にやってきた。（この脚本では男）
院長　　院長。まともなのだが、皆が勝手なことをするので困っている。（この脚本では男）
アシ　　アシスタント。若者、軽いノリ。なぜか美容師のような格好。（この脚本では女）
ドラ　　歯科医師で、院長の息子。院長のことはある程度リスペクトしている。（この脚本では男）
受付　　受付。院長に対しては少し当たりが強い。（この脚本では女）

板付き　舞台上はなんとなく下手～中央の診察エリア（診察台もある）、上手の受付エリアに分かれている。ここは街の歯科医院だ。診察時間が始まる前に、院長が受付、ドラ、アシスタントを集めて話をしている。

院長　　とにかく。あんまり妙なことをして、患者さんを困らせないでくれるか。何度も言ってるじゃないか。
受付　　院長、そんなかたいこと言わないでくださいよ。私たちは「おもてなし」を考えてやってるんですから。ねえ？
ドラ　　そうだよ。父さんの腕と僕たちの「おもてなし」ががっちり合わさって、ここは素敵な歯医者さんになるんだから。
アシ　　うちもそう思います。院長は、治療に専念してくれればいいンすよ。
院長　　いや、私は真面目に、普通に歯医者をやっていきたいんだ。君たちが変なことばかりしていると、ここの評判が……
（着信音が流れる）
ドラ　　……父さんのスマホじゃない？
院長　　……ああ、すまんすまん。ちょっと出てくるよ。とにかく、今日は真面目に頼んだよ。いいね？（下手に去る）
受付　　……仮にも病院なんだから、マナーモードにしておいて欲しいわ。ねえ？
アシ　　うちもそう思います。
受付　　ていうか、あの着信音なんだっけ、ファンモンのヒーロー？　院長、ヒーローっていうよりは悪役って感じの顔なのにねえ。
アシ　　うちもそう思います。

　下手から、北島がドアを開けて入ってくるアクト。スリッパに履き替える。（チャイムのＭ）

ドラ　　あ、患者さん来たみたい、準備しよ。
アシ　　はいはい。

　ドラ、アシは下手に去る。受付は受付につく。

受付　　こんにちは。
北島　　あ、すいません、今日治療の予約をしていた、北島、なんですけど。
受付　　ああ、お待ちしておりました。上着、おあずかりしますね。
北島　　（？）え、ああ、ありがとうございます。（上着を脱がせてもらう）
受付　　（上着をハンガーにかけながら）北島さん、メンバーズカードお持ちですか？
北島　　メンバーズカード？そんなのあるんですか？
受付　　またの名を保険証といいます。
北島　　いや保険証じゃないですか。ありますよ。（差し出す）いや、なんですかメンバーズカードって。なんのメンバーなんですか私。
受付　　（黙々と事務作業）
北島　　（答えてもらえなかったのに納得いかない様子で、椅子にかける。）
受付　　（しばらくして）あーそうだ北島さん、予約ってホットペッパーからですか？
北島　　え？　ホットペッパーに掲載してるんですか？
受付　　そうですよ。クーポンも使えるんですけど。
北島　　歯医者なのに？いやなんで載せてるんですか。ふつうに昨日電話しましたよ。
受付　　ああそうでしたか。じゃ「割引なし」、っと。もったいないっすねー。あ、準備できましたんで、診察室へどうぞ。
北島　　ありがとうございます。……わざわざ言わなくてもいいのに。

　北島、診察エリアに移動する。受付は残って、スマホをいじる。アシ、下手から入り。

アシ　　こんちはー。こちらどうぞ。
北島　　あ、はい。（診察台に座る）
アシ　　今日はどんな感じにしますか。
北島　　しますかって……いやなんか、右の下の奥歯がずっとしみるんですよ、虫歯できちゃったかなって。
アシ　　ああ、じゃ虫歯をすいて軽くする感じで、全体のバランスを整えるって感じっすかね。
北島　　……全体って何ですか？
アシ　　口ン中全体です。口内環境ってことっすよ。
北島　　……はあ、そうですか。
アシ　　（北島に前掛けをかけようとする。が、身体全体を覆うサイズで、明らかに大きい。）
北島　　ちょ、ちょっと。

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