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比良坂駅で

※ついている演出は一例です。この台本において、演出の変更は改変として扱いません。
　　緞帳開ける
　　要、下手側ベンチに座っている(頭を後ろにやって真上を見上げる)
　　スポット　要
　　莉乃、少ししてから下手から出て、要の後ろに立ち、覗き込む
　莉乃　電車はもう来ませんが？
　　照明フェードイン(白15%、オレンジ10%)
　　スポット　要、莉乃
　要　　...どちら様ですか？
　莉乃　この駅で駅員をしている加賀です。
　　要、体勢を整えて莉乃に軽く向き合う。
　要　　その駅員さんが何の用ですか？」
　莉乃　何の用と言われても...
　　　　終電も過ぎた夜の駅に人がいるのを不思議に思っただけです。
　要　　なら、放っておいてください。問題は、ないんでしょう？
　莉乃　誰を待っているんですか？
　要　　...なんでそう思んで？
　莉乃　と、言いますと？
　要　　ただ空をぼうっと見上げて座ってるだけなのに、
　　　　なんで人を待っていると思ったんですか？
　莉乃　勘です。
　要　　...勘、ね。
　　間
　要　　好きな人がいたんです。若気の至りとでも言いますか。
　莉乃　今も十分若いのに。
　要　　あなただって。バイトですか？駅員の仕事は。
　　莉乃、少しむっとしたように
　莉乃　それに近くはありますが、
　　　　少なくともあなたよりそれなりに長く生きてます。
　　少間
　　要、対岸を向いて
　要　　...ほんの少しの時間でも、
　　　　年を取ったような長さに感じることもあるんですよ。
　　莉乃、絶対に表情を崩さない
　要　　...付き合っていたわけではないんです。
　　　　しかも、多分ただの滑稽な片思い。飢えてたんでしょうね、きっと。
　莉乃　それが普通の学生というものです。
　要　　どうだか。恋愛なんてしている学生は今時そういやしません。
　　莉乃、少しだけ意外そうにする(分からなくてもよい)
　要　　あの人は、本当に優しかったんです。
　　　　僕だけじゃなくて、皆に。
　　　　それに魅かれたんです、というより、きっと補おうとしたんですね。
　　　　誰にでも優しくするだなんて、僕には到底出来ないことですから。
　莉乃　そうですか。(蛋白に)
　要　　中学の始めでした。
　　　　どこにでもあるようなないような話でして。
　莉乃　どっちなんですか。(思わず感)
　　(要、苦笑)
　要　　まあ、ない方ですかね。
　　　　昔助けてくれた人と、学校でまた会って、また助けてくれた。
　　　　それだけの話です。
　　　　…ただの偶然を、特別な運命と思いたくて、
　　　　都合のいいことばかり拾ってしまって。
　　　　都合のいいことにばかり目が行って、やれ相性の良いだの、
　　　　脈の多少あるだろうだの。
　　　　思い返せば見苦しいばかりです。
　莉乃　人間っていうのは、そんなものですよ。
　要　　そんなものですかね。
　莉乃　そんなものです。大体のことは、そんなもの、です。
　要　　そうですか...まあそうなんでしょう。

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