お土産話を、君に
  1場

イオリ
「おはようございます、カナデさん」
カナデ
「ん。おはよう。……少し、涼しくなってきたね」
イオリ
「そうですね。昨日までは蝉が鳴いてたのに、今日は聞こえない。……季節が変わってきてるんでしょうか」
カナデ
「きっとね。世界が荒れても、季節までは止まらないみたい」
イオリ
「……もしかして移動、ですか?」
カナデ
「うん。そろそろこの景色にも飽きてきた頃だし、今いるこのビルもそろそろ崩壊が始まってしまうだろうからね」
イオリ
「あ、手伝います!」
カナデ
「ありがとう。じゃあイオリさんは干してた洗濯物をお願いしてもいいかな」
イオリ
「わかりました!」
イオリ
「地球が滅びて、一ヶ月……。やっぱり、まだ実感わかないや。だって、原因だって“ウイルス”とか“大規模テロ”なんて……。まるで映画みたいで」
カナデ
「ふふっ、たしかに。もしこれが映画だとしたら、ラストシーンはどうなるんだろうね」
イオリ
「ハッピーエンドだったらいいなぁ、なんて」
(少しの間、沈黙)
イオリ
「えっと、そういえば。カナデさんは、どうして旅をしてるんですか?」
カナデ
「記録。この世界が実存していたっていう記録。それを残しておきたかったんだ」
イオリ
「なるほど、記録ですか…」
カナデ
「どんな物も消える時は跡形もなく消えてしまう。でも、自分みたいに写真を撮ったりして残せる物もあるんだ。それに…」
イオリ
「それに?」
カナデ
「あ、いや。とにかく、そういう記録を集めているんだよ」
イオリ
「……初めて知りました。そんな考えがあったんですね」
カナデ
「自分のことを話すことなんて、あんまりないもんね」
イオリ
「そうですね」
カナデ
「自分のことを話しちゃうと、相手のことも気になってきちゃった。イオリさんはどうして自分の旅について行くことにしたの?」
イオリ
「私ですか?」
カナデ
「うん。そういえば聞いてなかったなぁって思ってね」
イオリ
「私は、姉(兄)を…、片割れを探しているんです」
カナデ
「姉(兄)ってよくイオリさんのお話に出てくる人だよね。片割れってことは双子なの?」
イオリ
「はい。二卵性双生児?と言う物なので、あまり顔は似てませんけどね」
カナデ
「てっきり歳の近いお姉さん(お兄さん)だと思った。」
イオリ
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