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鳥籠

わかな：女性。健介の元恋人
健介：男性。わかなの元恋人

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健介：(M)慣れないカフェの、道沿いの席。休日の穏やかな午後。
健介：走り去る車を数えることも無くぼんやり眺めていると、近くの横断歩道を歩いてくる、懐かしい姿を見つけた。
健介：自然に視線が動きを追う。彼女は記憶の中と変わらない歩き方で真っ直ぐに、俺の待つ店へ入ってきた。
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健介：わかな、こっち！
わかな：あ…
健介：…久しぶり
わかな：うん、久しぶり。ごめん、待たせた？
健介：いや、約束の五分前だし
わかな：なら良かった。なにか注文した？
健介：まだ。来てからでいいかと思って
わかな：そう？ここ、紅茶が美味しいの
健介：紅茶か。最近飲んでないな
わかな：そうなの？味覚変わった？
健介：ただ単に、茶葉から入れる手間をかける時間が無くなっただけ
わかな：忙しいんだ
健介：まぁね。中小企業の中間管理職なんて、苦労引き受け人みたいな所あるから
わかな：苦労は買ってでもしろって言うじゃない？
健介：若い頃は、ね。もうそんな歳じゃない
わかな：そんな事言わないで、同い年なんだから。まだ若造って言われてもおかしくない年齢だよ
健介：そうは言っても無理出来ない歳になったって感じるよ
わかな：まぁ…そこは同意する。いい歳になってきたなって実感しちゃうよね
健介：…わかなは、変わってないよ
わかな：ふふ、ありがと。健介君は…少し渋くなったね
健介：本当に？お世辞ならいらないぜ
わかな：お世辞なんて言う間柄でも無いでしょ
健介：…それもそうか
わかな：注文決まった？
健介：そうだなぁ。これのミルクティーにする
わかな：ケーキセットにしなくていいの？
健介：…からかわないでくれよ
わかな：あら、甘いもの好きは卒業したの？
健介：してないけど
わかな：ならいいじゃない。私もセットにするから
健介：じゃあ、本日のケーキのセットで
わかな：わかった。(店員に)すみません、注文お願いします
健介：……
わかな：本日のケーキセットをふたつ。これのミルクティーとアイスコーヒーで。…ええ、お願いします
健介：…コーヒー？
わかな：うん
健介：そっちこそ好み変わった？
わかな：…紅茶も好きよ。ただコーヒーを飲む機会が多くなって、つい
健介：まぁ…八年経てば好みも変わるか
わかな：もうそんなに経つっけ
健介：正確には八年と三ヶ月
わかな：…相変わらずだけど、そういう細かいところは女の子に嫌われるよ
健介：だから誰とも長続きしないんだよ
わかな：そうなの？
健介：ああ。大抵振られる
わかな：じゃあ、今はフリーなんだ
健介：そうじゃなきゃ、異性との二人きりの待ち合わせなんて、適当に理由つけて断ってる
わかな：フリーなのが勿体ないとは思うけど。このタイミングとしてはちょうど良かった訳だ
健介：そういう事

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