ベラの夢
女性: さまよっていた女性
男性: 喫茶店のマスター、落ち着いている
アカ: 双子の一人、とても元気
シロ: 双子の一人。とても元気
女性:…は、はぁ…はぁ…
女性:(M)一体私は、どれだけの時間を彷徨っているのだろう。深い霧の中をずっと歩き続けている...何も見えない、足元すらも、鼻先の光景ですら見えないくらいの深い深い霧の中を、進んでいるのかどうなのかも怪しいのに、私はずっと歩いている
女性:(M)どれだけの時間、そうしていたか分からない。もう辞めよう、あと一歩歩いたら辞めよう、と思いながら、また一歩を踏み出す。もうくたくたなのに、どこかで止まることを恐れている自分がいる
女性:あ……ひ、かり…?
女性:(M)ぼんやりとした淡い光を視界にとらえた私は、思わずへたり込みそうになる安堵感を覚えた。が、ここで一度へたり込んでしまえばきっともう立ち上がれない。両の頬を軽く叩いて、最期の気力を振り絞って足を踏み出した。
入店、ドアベルが軽い音を立てる
アカ:あ
シロ:あ
アカ:いらっしゃいませー
シロ:いらっしゃいませー
アカ:お客さんだー
シロ:お客さんだー
女性:(軽くまだ息が乱れている)…え、っと…
アカ:いらっしゃい!
シロ:いらっしゃい!
アカ:マスター、マスター
シロ:お客さんだよーお客さんが来たよー
アカ:わーい
シロ:お客さんだー
男性:こらこらツインズ、走り回るんじゃない
アカ:だってー
シロ:だってー
アカ:嬉しいんだもん
シロ:ねー?
アカ:ねー?
男性:全く…あぁ、申し訳ありませんこの子達が
女性:いえ…あの、ここは…喫茶店、ですか?
男性:ええ、そうですよ。ようこそいらっしゃいました、「ベラの夢」へ
女性:べらの、ゆめ…?
男性:こちらへどうぞ。霧で濡れてしまってますね
アカ:タオル―
シロ:取って来るー
男性:ありがとう、頼んだよ。こちらへどうぞ
女性:…すみません、ありがとうございます
男性:今日は…特別霧が濃い、ここまで来るのに大変だったでしょう?
女性:…えぇ、前が全然見えなくて…
男性:こんなに濃い霧は久しぶりです
アカ:お待たせ―
シロ:タオル持ってきたー
男性:ありがとう。お客様、どうぞお使いください
シロ:使って使って
アカ:びしょ濡れー、風邪ひいちゃう
女性:ありがとう、大丈夫よ。……いい香り…
男性:ベルガモットの香りです。ゆったりと、気持ちが落ち着くと思いますよ
アカ:お姉さん、この香り好き?
女性:え?…うん、好きよ
シロ:落ち着く?
女性:そうね、とても落ち着くわ
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