テセウスの船
慎一郎 ラボに一人残った研究者。人工知能やアンドロイドの研究をしていた
ユリ 慎一郎が作った元、家事手伝い用アンドロイド。様々な機能を搭載することで人間らしくなった(話が進むにつれて徐々に人間らしい話し方になる)



慎一郎:僕が欲しかったのは…こんなことじゃなかったんだ…お前じゃない、お前はユリじゃない
ユリ:…慎一郎、私はユリです。あなたが私を生み出したんです
慎一郎:違う…こんな結果、望んでなかった…
ユリ:慎一郎、あなたがなんて言おうと私はユリです。ユリなんです

:間

ユリ:再起動完了、システムオールグリーン、起動します
慎一郎:さあユリ。手を動かしてみて
:間
慎一郎:起動には問題なさそうだな。モーター音も…うん、気にならない
ユリ:正常に機能しています
慎一郎:前よりずっと滑らかだ。この方がきっといい
ユリ:他システムへの互換性異常無し
慎一郎:それは良かった
ユリ:博士の動きに近い動きになりました
慎一郎:ああ、そうだね。さあ休憩にしようかユリ
ユリ:了解しました


ユリ:博士
慎一郎:なんだい?
ユリ:手の可動域が広くなりました
慎一郎:そうだね
ユリ:これはなにか利点がありますか。交換前の動きと違いはありますが、今までの機能に問題はありませんでした
慎一郎:ん~…そうだな。確かに今までの動きに何が問題があったわけじゃないね
ユリ:ではなぜでしょう
慎一郎:…気持ちの問題、かな
ユリ:気持ち、ですか
慎一郎:うん
ユリ:申し訳ありません。博士の言葉の意味を解析できませんでした
慎一郎:ユリの言う解析、は理解とも言い換えられるね
ユリ:理解
慎一郎:そう、理解
ユリ:では先ほどの私の言葉は、博士の言葉の意味を理解できませんでした、と同じでしょうか
慎一郎:そう思って差し支えないよ
ユリ:わかりました。登録します
慎一郎:そうだ、ついでに博士呼びを変えよう
ユリ:博士、では問題がありますか
慎一郎:問題はない。それこそ気持ちの問題だ
ユリ:単語は何に差し替えますか
慎一郎:慎一郎、と
ユリ:シンイチロウ。博士の名前ですね
慎一郎:そう。今度から僕の事を博士、ではなく慎一郎と呼ぶように
ユリ:了解しました。単語の登録変更を行います。リロードしますのでしばらくお待ちください
慎一郎:……
ユリ:単語登録情報の書き換え完了いたしました、シンイチロウ
慎一郎:今後はそれで
ユリ:シンイチロウ
慎一郎:なんだい?
ユリ:今までより言葉が長くなりました。これでは名前を呼ぶ時間が0,3秒長くなります
慎一郎:支障はない。名前とはそういうものなんだ
ユリ:名前は完了までの時間が長くなっても支障はないのですか。システム上、非効率です
慎一郎:名前とシステムは同じものではないんだ。情報という意味では同じかもしれないけど、持つ意味合いというか…重さが違う
ユリ:重さが違う。計量できるのですか
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