未来をかけた愛の逃避行とそして巻き込まれた魔王。
『未来をかけた愛の逃避行とそして巻き込まれた魔王。』
冒険の終わりと始まり。それは運命の交差点に生まれる一つの奇蹟だとして。
◆あらすじ◇
王女と共に駆け落ちした勇者。国王から差し向けられた追っ手から逃れるために向かう先は魔王城。そこで待ち受ける魔王は果たして血も涙もない存在か、或いは――。
未来をかけた戦いがいま、始まる。
◇登場人物◆ ※以下説明は参考までに。
魔王:ヴォルフラム・シュテファン・エルルケーニヒ・フォン・ヴェルトエンデ。
多様な種族を統べる比類無き魔人の王。版図の拡大と強者との邂逅を求めて数多の国に戦を仕掛けており、その性格は好戦的で残忍。と、噂されているが、広大な国土に眠る資源を狙っての侵略や名声のための言いがかりで戦いに巻き込まれていることが多く、降り掛かる火の粉を払っている内に半ば伝説になっているだけだが、ルスタヴィア王国を含む幾つかの国と戦争状態にある。占星の魔女より「覇道阻むは未来救う希望抱えし勇者のみ」と予言され、別に覇道なんて歩んでるつもりも無いのだが、他にやることも無いので勇者の到来を待つ。
勇者:マルスラン・ルネ・ラフラム。
ルスタヴィア王の命令で戦場を転々としてきた勇者。王国の孤児院で育てられた純真な少年だったが、戦闘技術に関する天賦の才を見出されて騎士となり、与えられた命令以上の活躍で次第に功績をあげていった。期待と嫉妬の目に晒され、不可能と言える命令が下り、結果味方が全滅する絶望的な逆境に立たされても折れない意志で一人生還し、勇者となった。それ以後与えられた命令は何でも熟し、防衛も侵略も暗殺も略奪も粛清も虐殺も遂行し数々の栄光を重ねてきた陰でその心は荒みきり、生きる希望や意味さえ失っていたが、王女クラリスとの出会いが人生を変える。彼女のために生き、そして死ぬことを誓い逃避行が始まった。
王女:クラリス・アンジェリッタ・リュシエンヌ・ド・ルスタヴィア。
ルスタヴィア王国の心優しい王女。可憐な容姿と、心の清らかさから国民の誰もが愛する存在。戦に明け暮れる王国にありながら、慈愛に満ちているのは、国王が政略結婚の道具として扱いやすいように、そういったものと隔絶した暮らしをさせてきたため。あるパーティーの夜、その華やかな場に似つかわしくない哀しげな目をした少年と出会い、互いを知る中でやがて恋に落ちていく。片や戦場での血腥い営み、片や王宮での華やかな暮らし。全く違う道を辿りながらもその生き方が、王国に囚われ消費されるだけの道具でしか無いことに気付き、そして二人で生きようと決意する。そんな折、マルスランとの間に子を身籠もり、国王は激怒し彼を牢獄に閉じ込めるに処刑しようとするが、脱獄を手引きしそのまま命懸けの駆け落ちをすることになる。
◇◆◆
月明かりに照らされた魔王の居城。
勇者マルスランと王女クラリスが連れ立っている。
クラリスの息遣いは荒い。
勇者:大丈夫かい、クラリス。
王女:……ふぅ、ええ平気、落ち着いてるわ、マルスラン。騎士達は追ってきてる?
勇者:ああ、来てるよ。この気配は……七つ星のルナールだな。
王女:七星騎士団団長、ブリアン・アタナージュ・ルナール。あの男は執念深いわ。
勇者:知ってるよ。君に七回も求婚したって。
王女:ふふ、七回無理難題を出して煙に巻いたけどね。
勇者:有名だよ。けれど、六回目までは叶えた。油断ならない男だ。
王女:あなたなら、七回目も難なくこなすけれど。
勇者:君のためなら、何だって。
王女:ありがとう。……はぁ、はぁ……。
勇者:ごめんね、クラリス、僕のせいでこんな、
王女:ううん、あなたといられる今この時が、一番幸せ。あなたは、七つの願いなんかじゃない。私の本当の望みを叶えてくれたもの。
勇者:クラリス……、僕もだよ。……それに、きっとあるよこの先に、もっとたくさんの幸せが。
王女:……そうね。きっと、そう。
王女:そしてここが、
勇者:最後の希望で、
王女:安息の地で。
勇者:僕達二人の旅の終着点で。
王女:私達三人の、冒険の出発点。
勇者:でも、本当に大丈夫かな? 血も涙もないって……。
王女:もう、そんな弱気でどうするの? 私を信じて。きっと大丈夫。あの予言の意味はきっと、そういうことだから。
勇者:よく分からないけど、そう、だよね。君が言うんだもの。
王女:それに駄目だったら、またその時考えれば良いんだもの。
勇者:えぇ……!?
王女:ふふ、険しい顔より、あなたはそっちの顔の方がいい。
勇者:もう、こんな時に。
王女:それに、暗い未来を考えるより、明るい未来を想像しましょ?
勇者:明るい未来?
王女:そうね、例えば……名前、かな。
勇者:ああ、まだ決めてなかったね。
王女:そう。まだ、未来は何も決まってないんだもの。悲観してては駄目。
勇者:好きだよ。そういうところ。
王女:ふふ。いつものあなたに戻った。
勇者:お待たせ。
勇者:じゃあ、行こうか、クラリス。
王女:ええ、マルスラン。
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