一人芝居「私の恋は始まる前に終わったかもしれない件について」
タイトル:私の恋は始まる前に終わったかもしれない件について
登場人物:
ミサキ: 書道部部長 明るく、少し夢見がちな女子高生。同じクラスの鈴木くんに片思い中。
アヤカ: 同じクラスの親友
鈴木大輝(すずきだいき): ミサキの片恋相手
舞台設定:
ミサキの自室。机、かわいい小物などが置かれている。机の上には、可愛い便箋と封筒、ペンが置かれている。
(上演時間:約15分~20分程度)
(ミサキの部屋。ミサキは勉強机の前に座り、目の前の便箋を睨みつけている。両手で頬を叩き、気合を入れる。)
ミサキ: よし…! やる。今日こそ、私はやるんだ! この想いを、この溢れ出すパトスを、一枚の紙に結晶させる! 待っててね、鈴木くん!
(ペンを手に取り、ぐっと握りしめるが、一行も書けずに固まってしまう。)
ミサキ: ・・・とは言ったものの。
(急に力が抜けて、机に突っ伏す。)
ミサキ: 何から書けばいいのさ、ラブレターなんて! 人生で初めて書くんですけど! そもそも、書き出しって何が正解? 「拝啓、鈴木大輝様」…? いやいや、堅すぎ! 時代劇じゃないんだから。じゃあ、もっとフランクに「Dear 鈴木くん」? ・・・なんか英語の教科書みたいだし、キザっぽくて却下!
(指先をクルクル回しながら、天井を仰ぐ。)
ミサキ: あー、もう! 鈴木くんの顔がちらついて集中できない! あの笑顔が、反則なんだよなあ。体育祭の時、クラス対抗リレーでアンカーだった鈴木くん。ゴールテープを切った瞬間の、汗と埃にまみれた、あの太陽みたいな笑顔…! 思い出すだけで、心臓が…(胸を押さえて)うっ、持たない!
(うっとりと回想に浸っていたが、ハッと我に返る。)
ミサキ: いかんいかん! 感傷に浸ってる場合じゃない! 明日の朝、さりげなく下駄箱に入れるっていう、超重要ミッションが待ってるんだから!
ミサキ: でも、鈴木くん、私の事どう思っるんだろ?・・・ただのクラスメイトその1?ぐらいな感じ?いや、でも、二週間前の化学の授業で! 私が消しゴム落とした時、拾ってくれた! 「はい」って渡してくれた時の、あの指の長さ! 骨張った、男の子の指…! きゃー!
(一人で悶え、倒れ込む。バタバタと足を動かす。)
ミサキ: …はっ! ダメだ、私。思い出だけでお腹いっぱいになっちゃうタイプだ。これじゃ、肝心の手紙がただの白い紙のままだ。…そうだ、こういう時は、親友のアドバイスを!
(ガバッと起き上がり、スマホを手に取る。メッセージアプリを開く仕草。)
ミサキ: (スマホ画面に話しかけるように)アヤカー!アヤカー! 緊急事態! 緊急事態発生!
(メッセージを打ち込み、送信する仕草。すぐに返信が来たように、スマホ画面を見る。)
ミサキ: (アヤカの口調を真似て)『なに、また鈴木くんのこと?』…エスパーか、お主は! そうだよ! 『ラブレター、全然書けない! 助けて!』っと。…既読、よし。
(少し間があって、返信を読む。)
ミサキ: 『だから言ったじゃん、直接言っちゃえって』…それができたら苦労しないの! 『無理! 女インキャのチキンハートをなめるな!』…っと。
(再び返信を読む。少し呆れたような顔で。このあとメッセージアプリの送信と受信を繰り返しそれを声に出して読むような感じで)
ミサキ: 『はいはい。で、どこで詰まってるの?』…えっと、書き出し。『「鈴木くんへ」でいいじゃん。シンプルイズベスト』…。えー、普通すぎない? もうちょっとこう、心を鷲掴みにするような何か・・・『でもさ、インパクトは欲しいよね』
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