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天木・楠木のリセット休暇

登場人物
天木　優　　劇作家　現在スランプ中
楠木　光太郎　　天木の助手
梅島　天木の元家政婦。
従業員

天木宅。机が一つと椅子が二つ。二人が向かい合わせで座っている。
机の上では天木が横たわっていて、その横には原稿用紙が積まれている。

楠木　あの、天木さん。ちょっといいですか？って、何ぐでってるんですか。
天木　はいはい、今書いてる書いてる。
楠木　僕には手が止まっているように見えるのですが。
天木　…だめだ、さっぱり思いつかん。
楠木　ちょっ、もうちょっと頑張ってくださいよ。まだ半分も受け取ってないんですから、僕も休むに休めないんですよ。
天木　いや、僕だってそりゃ、締切近いし早く書き終わりたい気持ちはやまやまだけど、インスピレーションが全くと言っていいほど浮かんでこないんだ。
楠木　前回のが好評じゃなかったからですか？まぁ、確かにあの作品は僕もあんまりでしたけど、でも物語としてはちゃんとできてたと思いますよ。ただちょっとキャラに魅力がなかったと言うか…あ、ストーリーは良かったんですけどね。
天木　うるさい！ていうか微妙だったんなら、なんでその時言ってくれなかったの！
楠木　いや、天木さんがやる気無くすかなって。
天木　そりゃ、落ち込むとは思うけど、すぐに持ち直してたもん！
楠木　いや、持ち直す時間が無いくらいギリギリだったじゃないですか。
天木　…確かに。
楠木　はいはい、納得したんなら、早く書く！いつも台本渡すのギリギリだからこうして締切を付けたって言うのに、これじゃあ演者の人達になんて説明すれば…
天木　まぁまぁ落ち着いてくれよ、光太郎君。
楠木　光太郎「君」？
天木　そのうちきっといい考えが浮かんでくるさ。
楠木　それ、一週間前にも言ってませんでした？
天木　…
楠木　もう我慢できません。僕に良い考えがあります。

楠木立ち上がり、机を叩いて言う。

楠木　天木さん…旅行行きましょう！
天木　……えっ！？いやいやいや、締切まであと一ヶ月もないんだよ！？そんな中旅行ってのは流石に僕も気が引けるっていうか、
楠木　大丈夫です！どうせ今のままだと、締切に間合いませんから！だったら、もう気分転換に何日か旅行に行ったほうが良いと思いません？
天木　…まぁ確かに、明日はスラスラ書ける、とも思えないし。
楠木　それに、今回のテーマって、人と人との「絆」じゃないですか。ですのでこうやって二人籠もっているよりも、外に出て色んな人と触れ合ってみるのもいいんじゃないですか？
天木　うん、まぁ…そうかもしれないけどさぁ、ほら、旅行行くくらいならさ、家でダラダラしたいっていうか…まだ暑いしぃ。
楠木　最近ずっとダラダラしてるじゃないですか！そのうち病気になりますよ！
天木　そう言われてもさぁ、僕インドア派だしぃ。エアコンと結婚してるしぃ。
楠木　みっともないですね、それでも年上ですか！
天木　あ！五歳しか違わないのに年上扱いしてくる！
楠木　五は結構違いますよ…
天木　うん、言ってて思った！
楠木　ていうか、別に何日も出るってわけじゃないんですよ！二泊だけですし。
天木　…まぁ、二泊だけなら、いいかも？
楠木　そうですよ！二泊だけ、です！
天木　まぁ、新しい視点も、見つかったり…？
楠木　ほら、良いところばっかり！では、そうと決まったら早く行きましょう！こういうのは思い切りが大事なんですよ！
天木　…でもさぁ、行くって言ってもいつ行くの？
楠木　明日、明日の朝出発しましょう！
天木　えっ、明日行くの！？早くないか！？
楠木　大丈夫ですって、まだ午後の三時。今からでも宿は探せますよ。
天木　ていうか行き先も決まってないんだけど…
楠木　そうですね…「絆」と言っても、人が多すぎる所っていうのは、なんていうか、その、違う気がするし…かといって人が全然いなかったら元も子もないと言うか…
天木　…あっ！そういえば、光太郎が来る前に居た梅島さん！あれ、光太郎知ってるっけ？
楠木　僕の前にいた、家政婦の方ですよね？
天木　そうそう！その梅島さん実家が、確か淡路島にあった気が…
楠木　淡路島ですか。
天木　そうそう、いやぁ、あそこは大学のサークルでも行ったことがあるけど、良いところだったよ！ほとんど一人で過ごしてたけど。
楠木　あぁ、まぁ天木さん意外と人付き合い苦手ですもんね

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