許される私たち
登場人物
主人公(男)
黒子1 部長(男)
黒子2 神田(男)
黒子3 井原(男)
黒子4 後輩(女)
黒子5 兄(男)
中央にたたずむ主人公。
主人公 僕は僕が好きだ。僕には何もないけど、それでもいいんだ。僕は本当は、韓国のグループみたいに足が長くなりたかったし、ジムに毎日通っているようなマッチョにもなってみたかったし、母さんみたいにうまい料理をつくれるようになりたかった。同級生のあいつみたいにバレンタイン用の紙袋を準備してみたかったし、あの学級委員長みたいにややこしい数式をすらすらと解いてみたかった。でも別にいいんだ。色々試してみたけど、僕には何にもないんだ。サッカーも陸上もTOEICも小説を書くのも勉強も料理も囲碁も全部やってみたけど、ないもんはしょうがないよ。だから目の前のことを精一杯やるんだ。迷惑かけずにやって、もし迷惑かけたら必死に謝るんだ。
黒子全員が片手にビールを持って走ってくる。
黒子1 では、プロジェクト大成功を祝して…
全員 かんぱーい!
黒子1 いやあ、一時はどうなることかと思ったけど、なんとかなるもんだねえ。
黒子2 そうですよね、園田さんのあのびっくりした顔(くすくす笑う)
黒子3 あいついつも俺らのことなめてんすよ!
黒子2 わかる。
黒子3 「まあ、最初からこうなっているのが当たり前なんですけどね。」
黒子2 「次発注するかはちょっと考えますね」
黒子3 どうせ次も来るよ。あいつ、陰湿過ぎて誰も取り合ってくんねえから。
黒子1 でも、君たちがあの時徹夜でフォローしてくれたからだよ。
黒子2・3 いやいやあ~
黒子1 お前も、な。頑張ってくれた。
主人公 いえ、最初にミスしたのは僕で。二人には助けられました。
黒子2 正直、あそこでお前がミスしてなかったら、あそこまで頑張れなかったよ。
黒子4 部長、おかわり要りますか?
黒子1 ああ、生で。
黒子3 ホントホント。むしろ今回のMVPってかんじ。
主人公 ホントにありがとう。ごめんね。
黒子3 気にすんな。ほら飲め飲め!
黒子2 こいつ、ホント気にしすぎなんすよ。なんとか言ってやってください。
黒子1 そうだなあ。こいつらの成長は派手かもしれないが、君の成長は着実なんだ。まだ2年目なんだから、君のペースで、一生懸命やればいい。それに、相手にもしっかり謝ってくれたじゃないか。そういうところが、君の長所なんだ。人には、人の役割があるんだよ。
黒子4 私も、一番話しやすいです、先輩が。
黒子2 ちょっと、やめてくれよ!
黒子3 なんでだよお!
主人公 みなさん、ありがとうございます…!
主人公、立って頭を下げる。黒子達、端にはける。
主人公、帰り道を歩く。
黒子1 こいつらの成長は派手かもしれないが、君の成長は着実なんだ。人には、人の役割があるんだよ。
主人公 ふうん。
黒子3 むしろ今回のMVPってかんじ。
主人公 そんなことはないだろ。僕だって別に、ミスしたくてしてるわけじゃないし。二人みたいに、簡単にこなせるタイプじゃないし。嫌味だろ。でも、僕が何もできないのはその通りだし。
黒子4 私も、一番話しやすいです、先輩が。
主人公 …。
黒子4 先輩と、話すの、楽しいです。
主人公 …。
黒子4 先輩、好き…!
主人公 僕、旦那にするには一番いいよなあ…。このまま頭も良くなったら、あいつらよりすごくなれるんじゃないか…?
主人公。頭をめぐらす。黒子達、大量の本を主人公の周りに落としていく。
主人公 何にしよう。僕にもできそうで、そこそこ知名度があって、そこそこすごいやつ勉強しよう。(本を選び、)これと、これと、これと…
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