友人代行
   人物
 松本梢(20)
 霧島亜美(20)
 手塚洋二(28)


〇駅前
   松本梢(20)、スマホを見ながら立っている。
   霧島亜美(20)が駆け寄ってくる。
   梢、顔を上げる。
   亜美、息を弾ませながら、
亜美「梢! ごめん、遅れたー!」
梢「また走ってきたの? 亜美はそういうとこだけ元気だね」
亜美「さ、行こ」
   二人、歩きながら並ぶ。
亜美「でさ、夏っぽいバッグ欲しいから見に行かない?」
梢「私は夏服の方が買いたいかな」
   スマホをいじりながら歩く梢。亜美もスマホを取り出す。
梢「あとこのアクセもちょっと――」
手塚「“可愛いね!”」
   梢、立ち止まる。横を向くと、手塚洋二(28)が隣にいる。
梢「……誰?」
手塚「すみません、僕は手塚といいます。友人代行をやってまして」
梢「代行?」
手塚「ええ。亜美さん、急に思い出した用事があって帰られました」
   梢、振り返る。遠ざかっていく亜美の背中が見える。
手塚「なので、代わりに僕がご一緒することになりました」
   亜美を真似る手塚。
手塚「“私もアクセ気になるー”」
   梢、無言。
手塚「“とりあえず、駅ビルのほうから見に行く? あそこって可愛いの多いし!”」
   梢、目をそらして反対に歩き出す。
手塚「“梢、買い物はー?”」
   歩いていく梢。
   手塚、立ち尽くす。

〇駅前
   梢、スマホを見ながら立っている。
   亜美が走ってやってくる。時計を見る亜美。
亜美「間に合った!」
   梢、亜美をじっと見る。
亜美「ほんとに。あの日はどうしても外せないことがあって」
   梢、短くうなずく。
梢「まあ、いいけど。代行ってのは二度とやめて」
亜美「うん。ごめん」
   二人、歩き出す。
亜美「とりあえずお腹すいたー。あの角の喫茶店、行く?」
梢「いいけど、あそこ混んでない? 今ならファミレスの方が座れると思うよ」
   スマホを取り出す梢。いじりながら歩く。亜美もスマホを出す。
梢「ねえ、これ美味しそうじゃない?」
   梢、スマホを亜美に向ける。手塚が隣にいる。
手塚「”わあ、美味しそう!”」
   梢、目を見開き、振り返る。
   亜美の背中が遠ざかっていく。梢の方にお辞儀をして手を合わせる亜美。
手塚「また急用だそうです。“ねえ早く行こう!”」
   梢、何も言わずに反対に歩き出す。
手塚「あの、私亜美さんから前金をいただいておりまして」
   梢、立ち止まる。
手塚「せっかくなので少しお話しませんか」
   にっこり笑う手塚。
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