退屈なパーティー
『退屈なパーティー』
登場人物の名前と性(それに伴う人称や口調)は自由に変えて良い
以下、Aのセリフ
二人きりになっちゃったね。
あ、なんかごめんね。田中さんせっかく来てくれたのに。
うーん、こんなはずじゃなかったんだけどなあ。
あ、そういえば、田中さんさ。(少し言いよどむ)
うーんと、あの、失礼なこと聞くかもなんだけど。田中さん、なんで来てくれたんだっけ。
そっか、小林が誘ったんだ。そういえば友達連れてきたいっていってたな、あいつ。田中さんのことだったんだ。そっかそっか。や、ごめんね。つまんなかったよね、小林も早々に消えちゃうし。
そんなことない?いいよいいよ、気使わなくて。つまんなくしてんの俺だし。
あ、いや謙遜じゃなくて。つまんないパーティー主催してんの、俺。
いやほんと大丈夫だよ。うん。そのためにやってんの。
どういうことかって?
えっとさ、聞いたことあるかな。「こんなつまんないパーティー二人で抜け出さない?」ってやつ。
そうそう。そのあと二人でどっか行く口実になるやつ。
俺、あれのために今回のパーティー企画したの。
え?なんのためにって、「こんなつまんないパーティー二人で抜け出さない?」シチュを作るため。見ての通り、みんないなくなったでしょ。
あ、俺そこそこ友達多いほうなんだけど。自慢じゃないけどね。周りに恋愛体質の奴多くてさー。
なに。ああ、俺は全然。相談されるだけ。全然、そんな話ないんだよね。ざんねん。で相談乗ってたんだけど、両片思い?っていうの?もうお前らくっつけよ、みたいなの多くて。で、そういうやつらだけ呼んで、パーティー開いたの。ほどほどにつまんないやつ。
つまんなかったでしょ。絶妙なつまんない加減だよね。我ながらよくやったと思う。ご飯もまずくないけどそこそこ、みたいな感じ。すごくない?逆に。来てやってもいいけど理由があればまあ抜けるよなー、みたいな。小林のやつ、最初にいなくなりやがって。今頃佐藤といちゃついてんだよ、絶対。お膳立てしてやった側だけどちょっとむかつくな。
なんかさ、序盤にちょっとずつ消えてってさ。一定のタイミングで大量にいなくなったでしょ。演出っぽく部屋暗くしたじゃん、そのとき。みんなチャンス掴んだんだねーいや良かった良かった。一斉にいなくなってくれないとさ、残り3人とかになったら気まずいじゃん。あ。
……あー、ごめんね。良かったじゃないよね、ただつまんねえパーティー呼ばれちゃっただけだもんね。田中さんがいるの、正直誤算だったんだ。うん。なんでかなー。ちゃんと数えたんだけど。偶数だったのに。あれ?偶数って俺入ったまま数えてた?そりゃだめか。わー、やらかした。いやごめん。ほんとごめんね。うん。来てくれてありがとう。
……ほんとは残っててくれてちょっと嬉しいよ。やっぱ寂しいじゃん、つまんないとはいえ俺が開いたパーティーだもん。
あ、田中さん、俺が主催って知らずに来てたんだ。
やっぱ正直、つまんなかった?だよね。気ィつかってくれてたんだ、ごめんね。
なに、どしたの。
え、本当は抜け出すつもりだったの。わ。やっぱそっかー。そうだよねつまんなかったよね。ごめんね、片付けとか俺やっとくからさ、あんま遅くなる前に帰った方がいいかも。
じゃなくて?
うん。
え。
「こんなつまらないパーティー、今から二人で抜け出さない?」
音楽。
A、驚き照れたような表情で、頷く。
暗転。
了
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