深淵をのぞく時、
【深淵をのぞく時】 作 朱雪


〈登場人物〉
生徒A(生A)
生徒B(生B)
研究者A(研A)
研究者B(研B)
政府職員(職員)




1.
 中央に机。その周りに椅子が二つ。
 その片方に生徒Aが座っている。
 上手から生徒Bが出てくる。


生B 「おいお前見ろよこれ!」
生A 「なんだようるさいな。俺今大事なとこだから後にしてくれ」
生B 「ゲームなんてしてる場合じゃないんだよ!つーかお前それいつのやつだよ?リリース2024年とかじゃなかったっけ」
生A 「レトロって感じがして良いだろ」
生B 「レトロにしては古すぎだろ。ぎり歴史の教科書に載ってる年代じゃん」
生A 「それが今も動いてるっていうのもすげえよな」
生B 「まぁ当時からはだいぶ技術も進んだもんな」
生A 「で、何を俺に見て欲しかったんだ?」
生B 「あぁ、そうだった。これだよこれ!」
生A 「『We have reached the truth of this world.』?この世の真理にたどり着いた、って…。なんだ、これ?」
生B 「アメリカの先端技術を扱う研究機関が出した論文なんだけどさ、今めっちゃ話題になっててさ」
生A 「なんかタイトルからすでに胡散臭いけどな。で、なんて内容なんだ?」
生B 「『この世は私たちとは違う人類の実験道具に過ぎない。要は観察対象だ。』だってさ」
生A 「なんかそれだいぶ前に流行ってなかったか?なんたら仮説みたいな」
生B 「シュミレーション仮説のこと?」
生A 「あーそう。それだわ。俺たちの生きているこの世界が知的存在によって作られたシュミレーションだ、ってやつ」
生B 「もうまさにそれなんだよ、この論文。なんかめちゃくちゃに高度な技術で向こう側…えっと、俺たちのことを観察している奴らを確認することができたらしい」
生A 「…まじで?」
生B 「よく分かんねえよな。でもまぁ…なぁ、そこに居るんだろ?研究者さん」
生A 「は?」
生B 「なんてな。冗談だよ」
生A 「驚かせんなって」
生B 「あはは、ごめんごめん。でもなんか面白いよな」
生A 「何がだよ?」
生B 「俺たちが今まで普通に生活して、積み上げてきたものが全部本物じゃなかったんだぜ」
生A 「まぁ不思議な感じはするな」
生B 「でもそのことに気づいたからってこの先どうしていくんだろうな」
生A 「今までとは変わらない生活が続くんじゃないか?向こう側の奴らが干渉してこない限り」
生B 「まぁ確かにな」
生A 「そろそろ授業始まるから教室戻ろうぜ」
生B 「ほんとだ。次の授業なんだっけ?」
生A 「物理」
生B 「まじかー。でもさ、この世界が本物でないって分かった今この世の仕組みについて学ぶ必要ってあるかな?」
生A  「そこは目を瞑って授業受けるしかないだろ」
生B  「確かになー」


 生徒A、生徒B下手へはける
 暗転


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