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金庫室より愛をこめて

「金庫室より愛を込めて」

　　　　　脚本　橋口征司

　　　　　　☆

　　登場人物

　　　課長補佐（４９歳・男性）

　　　金井（２６歳・男性・営業）

　　　小林（３５歳・女性・貸付）

　　　室田（２２歳・女性・窓口）

　　　　　　　　　　☆

　　　　　　暗闇の中、４人の人影が倒れている。少しずつ明るくなりあたりの様子がわかる。
　　　　　　どうやら「十一（といち）銀行　貸渋利（かししぶり）支店」の金庫室のようだ。
　　　　　　人影はこの支店勤務の課長補佐・金井・小林・室田の４人である。
　　　　　　横の机の上には時限爆弾らしきものが置いてある。

小林　　・・・う、ん・・・

　　　　　　小林、あたりを見回す。課長補佐を見つけ、はっとして体をチェックするが、
　　　　　　何も異変がないためホッとして舌打ちする。
　　　　　　課長補佐が動いたため慌てて寝たフリをする。

補佐　　むぅ・・・

　　　　　　補佐、自分の体をチェック、ズボンの中など見るが異変がないためホッとする。
　　　　　　まわりを見渡し、金井を起こそうとするがやめて、小林を引きずって動かす。
　　　　　　室田に人工呼吸をしようとした瞬間、金井が気づいたため慌ててとび退き、
　　　　　　寝たふりをする。

金井　　う・・・なんだよ？ここ・・・金庫室か？仕事中、だよな・・・（腕時計を見る）。
　　　　なんでこんなトコにいるんだ〜？・・・たしか外回りから帰って、（暗く）補佐に怒られて
　　　　（明るく）室田ちゃんに声かけて（暗く）小林さんのいれてくれたコーヒー飲んで、
　　　　それから・・・う〜ん・・・

　　　　　　金井、あたりを見回す。倒れている３人に気付く。補佐を起こしに近寄ろうとするが
　　　　　　嫌いなのでやめて、小林を起こすか室田を起こすか考える。

金井　　小林さんかな・・・いや、室田ちゃんのほうがね・・・でも小林さんを先に起こさないと
　　　　イヤミ言われるかな・・・（補佐を見て）アレは後にしよう。ど・ち・ら・に・し・よ・う・
　　　　か・な？（小林で止まるが室田に変えて）やっぱり、こういうときは人工呼吸でしょう〜！
補佐　　（ムックリ起きて）何で後回しなんだ？
金井　　補佐！生きてたんですか！
補佐　　生きてたってなんだよ！まったく・・・それよりお前、今とってもヨコシマなこと
　　　　考えていなかったか？
金井　　え？いえ、俺は別に・・・
補佐　　人工呼吸とか言ったな？ちゃんと聞いてたぞ〜？
金井　　その、不謹慎な意味では・・・（ボソッと）イヤミな人だな。
補佐　　なんて事を考えてるんだ君は。実にいいアイディアじゃないか。
金井　　え？
補佐　　そりゃ人命には代えられんさ。眠れる森の美女も白雪姫も、みんなそれで生き返った！
金井　　いや、彼女は別に死んでるわけじゃないと思いますが。
補佐　　正しいやり方を知っているかね？

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