人喰い屋敷の傀儡師
人喰い屋敷の傀儡師(ひとくいやしきのかいらいし)
作:魚谷肴
キール(男)
マリア(女):黒いベールをかぶった女性
バラク(男):屋敷のバトラー。常に帽子をかぶっている。
ラジー(女):ハウスメイド。不自然な歩き方をする。
ウル(女):料理長。マスクやコック帽で顔は目元しか露出していない。
ラファエル(男):双子の庭師。兄。
ミカエリス(男):双子の庭師。弟。
旅人(男女不定)
強い雨と風の吹き付ける夜の森の中、一人の旅人が先を急いでいる。
旅人 くそ、ついてないな……。次の街までまだ三日はかかるってのに。ん……? あれは……、屋敷?
旅人の視線の先には、ひっそりと不気味な屋敷が佇んでいる。
旅人 助かった……いや、待てよ。そういえば、さっきの街で変な噂を聞いたような……
雨と風さらに強くなる。
旅人 うわっ……くそ!
旅人、強まった雨風から逃れたい一心で、怪しく明かりの点った屋敷へと歩を進めていく。
場転
マリア 北にある迷いの森、その更に奥の奥の奥深く。
バラク 鬱蒼とした木々に囲まれて、ひっそりと不気味な屋敷がたっている。
ラジー そこには、人形師の男が住んでいて、毎日毎日、来る日も来る日も人形を作って暮らしているらしい。
ウル その屋敷の戸を叩いたが最後、出てきた人間を見たものは、誰もいない。
ラフィ 噂では、屋敷に招き入れた人間を、自分の作る人形の材料にしているとか
ミカ 彼の作る人形はまるで死体のように人間そっくりで、真夜中にひとりでに動き出すらし
い
使用人 その人形師の名は
キール キール。キール・パペッター
使用人 人喰い屋敷の、不気味な男。
場転、旅人が屋敷の玄関口で外套に付いた雨を払っている。
旅人(M)人喰い屋敷、なんて、街で噂されていたが、辿り着いたそこは、思っていたよりも随分小綺麗な屋敷だった。蜘蛛の巣どころか、砂埃だって無いし、窓も一枚残らずピカピカだ。庭の植木も綺麗にそろっている。
旅人、屋敷の玄関をしげしげとみつめている。
旅人(M)人形師キール、だったか。街の人達は、まるで幽霊か化け物のように好き勝手噂していたが、案外立派な人なのかもしれない。
旅人、ドアベルを鳴らす。
旅人 ごめんください、ごめんください
暫くして、扉の向こうからラジーの声。
ラジー はい、どちら様でしょうか
旅人 すみません、旅のものなのですが、嵐で道に迷ってしまいまして……、宜しければ、ご迷惑にならない所で構いませんので、雨をしのげる場所を貸していただけませんか
マリア まぁ、それは大変! 扉を開けて差し上げなさい、ラジー
ラジー は、はい! 奥様!
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