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『ハッピーバースデー』

『ハッピーバースデー』

１　若い女
２　少女
３　男

夕方。
バス乗り場の待合スペース。赤の他人が3人並んで座れるくらいの幅の椅子がある。
バスが停まり、１と２を降ろし走り去っていく。
１、腑に落ちないというか、微妙な面持ち。諦めて椅子に座る。何か思い悩んでいる様子。
少女、椅子に座る。

１　あなたも？
２　はい？
１　バス。
２　ええ、乗ってましたけど。
１　乗り間違えたのよ、私。駅前に行きたかったんだけど。
２　途中までしか行かないバスだったと。
１　そう。次のに乗れば帰れるみたいだけど、こんな田舎じゃあね。
２　まあまあ、待ちますか。
１　そんなに。10分かそこらね。
２　そうですか。
１　あなたは？どこまで行くの？
２　私は、別に。どこか行きたかっただけっていうか。
１　……？
２　ああ、いえ、(ちょっと考えて)もともとここで降りるつもりだったんです。
１　じゃあ、何を待ってるの？
２　別に、今日はもうなにも。ただ、お姉さん難しい顔をしてたから。
１　そう。
２　何かお悩みかなって。
１　まあ、ね。
２　話してみません？
１　初めて会った子に話すようなことじゃないのよ。
２　そうですか。話したくないなら、別にいいんですけど。
１　誰かに言ってしまいたいのかもしれない。けど、軽々しく言えることじゃないから。
２　そうですか。

しばしの沈黙。

２　暇ですね。
１　あなた、帰らなくていいの？
２　お姉さんがバスに乗るの見届けてから帰ります。
１　遅くなるわよ。
２　ここからすぐなんで。
１　そう？まあ、好きにしたらいいけど。家族を心配させちゃだめよ。
２　親の顔、全然見たことなかったんで。心配とか別に、ないですよ。
１　……立ち入ったこと聞いたかしら、ごめんなさいね。
２　いいんです。私は厄介者なので。
１　そんなことないわよ。
２　いえ。でも、ありがとうございます。

雨が降ってくる。
３、現れる。
１と２、ちょっと詰める。
３、椅子の空いている箇所に座る。

３　どうも。
１　急に降ってきましたね。
３　いや、困ったもんです。

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