これは海亀のスープですか?
「これは海亀のスープですか?」 作・東 詩依




【登場人物】

 塩谷 玲(しおや れい)   レストランの店長兼シェフ。
 天満 葵(てんま あおい)  レストランの従業員。ウェイター。
 市山 美弥(いちやま みや) レストランの従業員。仕入れ担当。
 春野 マツ(はるの まつ)  客の老人。
 金花 姫愛(かねはな ひな) 客のギャル。マツの同伴者。




   舞台は町外れにある個人経営のレストランである。


○レストラン(昼過ぎ)


   お昼のピークが過ぎ、客のいないレストラン。
   店長兼シェフの玲とウェイターの葵が談笑している。


玲 そのとき、食材が喋った気がしたんだ――ここを切れば、いちばん効率よく味が染みるよ――って!
葵 さすが店長! 僕もいつかその域に達したいなぁ。


   休憩も束の間、レストランのドアが開き、姫愛とマツが入店する。
   玲は厨房に、葵は接客しに行く。


葵 いらっしゃいませ、何名様でしょうか?
姫愛 二人だよ、うちとこっちのばーちゃんね。
葵 かしこまりました、お席へご案内します。(テーブルへ案内し)こちらへどうぞ。
姫愛 ばーちゃん、荷物こっちによこしな。
マツ すまないねぇ。
葵 (メニューを差し出し)メニューでございます。ご注文がお決まりになりましたら、こちらのベルでお呼びください。
姫愛 はいはーい。
葵 それでは、失礼いたします。


   葵、テーブルを離れる。


姫愛 (メニューを見て)へー色々あるじゃん……あ。
マツ どうしたんだい?
姫愛 これ。
マツ ……海亀のスープ。
姫愛 ……。
マツ それじゃあせっかくだし、これにしようかね。
姫愛 うん、うちもそれで。(ベルを鳴らす)


   葵がテーブルに戻って来る。


葵 お待たせいたしました、ご注文をお伺いします。
1/8

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム