あいせないすうしき
メイド、博士、側近、地元の人、老人、貴婦人、少年
緞帳開く。そこには散乱しきったような研究所が。ひとは2名。1人は白衣を着て身なりを気にしていないような格好をしている。そしてもう一人の女の子は、ワンピースにエプロンをつけている。
メイド「博士、先程も申しましたがご飯の時間です。……博士」
メイドが声をかけるが博士は気づかず。デスクに向かっている。
メイドが顔の近くで大きな声を出す。
メイド「……博士!」
博士が驚いてこちらを向く。
博士「おっと!何だいもう……驚かせないでくれよ」
メイド「私は普通に声をかけてたのに博士がなかなか気づかないせいです」
博士「私のせいだって言うのかい?」
メイド「ええ、博士のせいです」
博士「そうかい。相変わらず朝からつれないね」
メイド「私の態度は朝も昼も夜も変わりません」
博士「確かにそうだねえ」
メイド「……また、寝らずに発明を?」
博士「うん、そうだよ。最高の頭脳を生まれ持ったこの天才科学者の私には1秒たりとも無駄にする時間などないのさ」
メイド「睡眠は無駄な時間ではありません。日々の生活を健康的に送るための大事な……」
博士「あーーハイハイわかったわかった!君の言うことはいっつも正しくて素晴らしい本当に素晴らしいね」
メイドが怒ったように。
メイド「……これ、朝食です(がしゃんと音を立てながらお盆を置く)」
博士「おおお怖い怖い。もしかして怒った?」
メイド「怒っていません。ただ博士の馬鹿さ加減に絶望的に呆れているだけです」
博士「なんだとー!この私が馬鹿なんて!」
メイド「はい。この私の話を遮って真面目に聞かないあたり大馬鹿者です」
博士「ぐぬぬぬぬぬ……私基準で自尊心を設定してしまったせいでめちゃくちゃに自尊心が高い……!ちょっと!私は天才なんだぞー!!」
メイド「天才だろうが馬鹿だろうがどうでもいいので、とりあえず朝食を食べてしまってください。あと30分で孤児院の方が来られます」
博士「嘘!あと30分!?」
メイド「嘘ではありません。私は嘘がつけるように作られていませんから」
博士「どうしてもっと早く来てくれなかったんだよー!!」
メイド「来ましたよ。1時間半前と1時間前と30分前に来ました。それぞれ返事がなかったのでキッチンへと戻りましたが。それが何か」
博士「ぐあーーーっ!!なら私が悪い!」
メイド「つべこべ言わずに早く食べてください。ポーチドエッグとバタートースト、それにコーヒーです。今日はエスプレッソを入れてみました。ほら」
メイドが強引に博士にコーヒーを飲ませる。
博士「っだ熱っっつ!!……にっっっが!!!」
メイド「淹れたてなので熱いのは当たり前、エスプレッソなので苦いのは当たり前です。少しでも頭が冴えるように、ですよ。そんなボケた顔で人と会ったら笑われてしまいます」
博士「ボケた顔とは何事だ!!」
メイド「鏡見ます?」
メイド、ポケットから手鏡を取り出す。
博士「……確かにボケた顔だ……」
メイド「でしょう?」
博士「……あ……私、昨日シャワー浴びてない……!」
メイド「私、寝る前に浴びてくださいよって言いましたよね?」
博士「すっかり忘れてた……(自分の白衣の匂いを嗅ぎながら)え、私、臭い?臭いよね?」
メイド「(匂いを嗅いで)……腐ったオイルの匂いがします」
博士「まずいまずいまずいぞ」
メイド「これでも被ってください」
メイド、机の上に倒れていたファブリーズを手に取りスプレーしていく。博士はその前をぐるぐる回る。
博士「ありがとう!うん!これでいい香り!」
メイド「……今日はちゃんとお風呂に入ってくださいね」
博士「勿論だよ」
メイド「……全く、博士は私がいないとなんにもできないんですから」
博士「そうだね、君がいないと私はなんにもできないよう。そのために君を作ったんだからねえ」
メイド「……開き直らないでください。ほら、早く食べてしまってください。皿洗いをしたいんです。あともう洗濯もしちゃいますからね、」
博士「はいはいはい分かった分かった。いただきます!」
そこで玄関のチャイムが鳴る。
博士「早いな!」
メイド「予定より20分も早いですね。……はぁい!」
メイドが玄関先で人を迎える。
博士、その間にコーヒーを飲み干す。
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