一服してもいいですか?
「一服してもいいですか?」 作・東 詩依
【登場人物】
大人1
大人2
舞台は住宅街の片隅にあるような、何の変哲もない公園である。
舞台中央にベンチ、その傍に煙草の吸い殻入れが置いてある。
○昼下がりの公園
公園の外れにあるベンチ、そこに1がひとりで座っている。
1は何をするでもなく、ぼーっと空を眺めている。
少し経ち、下手から2がやって来る。
2はまっすぐベンチに向かい、1に話しかける。
2 すみません。
1 (2に気づき)はい、何でしょう?
2 一服してもいいですか?
1 え? 嫌ですけど。
2 え……? (少し考え)一服させていただいてもよろしいでしょうか?
1 だから嫌ですって。
2 え……!?(更に考え)あ――一服というのはですね、煙草を吸うという――。
1 (遮って)すみません。
2 はい。
1 そこじゃないです。
2 じゃない……?
1 あなた、煙草を吸いたいんでしょう?
2 そうです! 何だわかってたんじゃないですか。
1 えぇ――その上で、私は嫌だと言っているんです。
2 そんな……でもここに……!(吸殻入れを指差す)
1 あぁ――ありますね、吸殻入れ。で、これが何です?
2 いや、だから……。
1 吸殻入れがあれば所構わず吸える――そういうものではないでしょう、それは。あなたもそれがわかっているから、私に声をかけたんですよね?
2 それは……でもここは――。
1 (遮って)公園のベンチ――です。喫煙所ではありません。
2 (ため息)わかりましたよ……。
2、1の隣に座る。
1 ちょっと……!
2 何です? ここはベンチなんですから、私にだって座る権利はあるでしょう?
1 ……吸わないのなら好きにしてください。
少し間。沈黙が続く中、2がポツリとぼやく。
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