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夏の延滞

『夏の延滞』

　〇登場人物（女性４名）
　　雛乃
　　瑠衣
　　新名（にいな）
　　滝川先生

　　　幕が開く。
　　　舞台は図書室。中央に大きめの窓（２枠以上）。窓の下方にはベンチソファが２台、
　　　壁に沿って並んでいる。そのソファの両脇には、窓枠の高さまでの本棚が並んでいる。
　　　窓から中庭の樹木が見える。夏の陽光に照らされ、緑が輝いている。
　　　８月上旬。午後１時ごろ。滝川先生、雛乃、瑠衣がいる。

滝川　じゃあ５時までね。
雛乃　ありがとうございます。
滝川　業者さん明日の午前中に来るから、午後には大丈夫だと思うんだけど、
瑠衣　絶対直してくださいね？うちらの人生かかってますから。
滝川　お、おう、伝えておくよ。
雛乃　困らせないでよ。
瑠衣　だって先生かわいいんだもんー。
雛乃　関係ないじゃん。
滝川　わたしも３年目だからね？もう新人とは言わせないよ？
雛乃　早いですねぇ。
滝川　２人はこの夏休みが勝負だ。
瑠衣　やだぁー。
滝川　じゃ、帰るとき声かけてね。わたしいなかったらほかの先生に鍵頼んで。
雛乃　はい。
瑠衣　担任やって司書やって、部活の顧問までやるなんて、大変だねタッキー。
滝川　あら、ありがとう。２人もがんばって。
雛乃　がんばります。
瑠衣　あざまーす。

　　　滝川先生去る。瑠衣、鞄をソファに置き、横たわる。

雛乃　なんだか急に意気消沈って感じ。
瑠衣　それなぁ。

　　　雛乃も鞄を置いて腰掛け、だらりと天井を見上げる。
　　　蝉が鳴き始める。しばらくの間。

瑠衣　寝そう。
雛乃　快適だぁ。
瑠衣　電気代と地球環境を生贄に捧げてるがぁー。
雛乃　エアコンはなくてはならないよー。
瑠衣　んあぁー。
雛乃　そういえば綾香って帰った？
瑠衣　図書館行くって。
雛乃　だよねー。
瑠衣　のん子は家帰ったし。
雛乃　集中できないんだよなー、家も図書館も。
瑠衣　うちらだけだよ、自習室に入り浸ってるの。
雛乃　あそこちょうどいいんだよねぇ。オオヤケとワタクシの狭間っていうか、
瑠衣　ただ集中力ないだけでしょ。
雛乃　あるしー。
瑠衣　じゃあ勉強しなよ。
雛乃　……ここは、ノスタルジックすぎる。
瑠衣　……そうだね。
雛乃　本たちが、わたしに語り掛けてくる。
瑠衣　なんて？

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