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磁力と幻肢痛　(20分)

2025年版

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　　　男は左手に革製の黒い手袋をしている。

父　…。
娘　…。
男　…。

　　　間。

男　今日は、お時間を頂きまして、ありがとうございます…。
父　…。
娘　私達から、お父さんに。ご報告が3つほど。　
父　…。

　　　部屋の電気が消えそうになって、また点く。

父　…。
娘　…。
男　…。

　　　部屋の電気が消えそうになって、また点く。

娘　交換しなよ、電気。
父　変えても変えなくても一緒だ。
娘　一緒って事ないでしょ。孤独死する傾向だってよ？　電気が切れたり障子が破れても放っ
　　ておくのは。身の回りに気を掛けなくなると、生活水準が落ちていくんだって。
父　俺は大丈夫だ。
娘　過信してる人こそ危ないんだよ。
父　なんだ、説教し来たのか？
娘　違うよ、ご報告だってば。
父　すればいいだろ。
娘　じゃあまず、こちらの方とお付き合いを。
男　させて頂いております。
父　好きにしたらいい。
娘　あ、そんな感じなんだ？　どんな反応するのか読めてなかったから。
父　その歳で相手がいないほうが心配だ。お前だって孤独死しないとは限らないからな？
娘　じゃあ、いいのね？
父　いいも何も、当人同士で問題がないなら、俺は別に。今のが１つ目の報告か？
娘　だね。
父　2つ目は、その先の話か？
娘　察しが良くて助かります。じゃあ、改めて…。
男　お久しぶりです。
父　…？
男　薗田、和也です。その節は、本当に申し訳ありませんでした。

　　　間。

父　…お前、分かってるのか。
娘　何が。
男　本当に、申し訳ありません…。
父　いや…。君は悪くない。
娘　ずっとお母さんのお墓参りに来てくれてたんだよ。だから、少しずつ話をする様になって。
男　…去年、祖父が亡くなりました。
父　知ってるよ。随分と盛大な葬式だったらしいな。
男　…。
父　正直、あまり良い気分ではなかったよ。
男　…僕がそうしました。喪主でしたので。

　　　間。

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