人形喫茶「雛福堂」
Vt.ショコラプレート
人形喫茶「雛福堂」 Vt.ショコラプレート
(にんぎょうきっさ「ひなふくどう」バレンタインショコラプレート)
人物
志陽:女。雛福堂のオーナーで、秘密裏にドールと話ができる
カカオ:女。雛福堂の常連で、今日のために有給をとってきた
教授:男。雛福堂の常連で、近くの大学の文化学の教授
アルヅマ:男の球体関節人形。
ベリジャン:女の球体関節人形
あらすじ
雛福堂の2月はバレンタインスペシャル。特別なデザートプレートと、期間限定フォトブースが登場している。今日のお客さんは数年前に発売されたとあるシリーズの人形だった。チョコにあうコーヒーでも飲みながら、一緒に話しませんか?
本編
◯人形喫茶「雛福堂」 店内(夕)
カカオのテーブルに志陽がデザートプレートなどを持ってくる
志陽「カカオさん、お待たせしました。バレンタイン特別デザートプレートとなっております」
カカオ「来た来た! 待ってました!」
志陽「オランジェット、チョコプリン、スパイスクッキー…そして、チョコに合うコーヒーです」
カカオ「食べる前に撮ろ…綺麗すぎる…」
志陽「そしてチョコプリンにですね…このチョコソースをかけてあげると…」
カカオ「志陽さん…こんな背徳的なデザート出すだなんて…罪深いオーナーね…」
志陽「そう言って美味しそうに食べてくれて、ドル活(どるかつ)してくれるお客様の為なら頑張れますもの」
カカオ「だからここに何回でも来たくなるのよ!」
志陽「ありがとうございます。そして、これどうぞ。サービスです」
カカオの目の前に掌に収まるほどのチョコプリンが置かれる
志陽「ドール君用のチョコプリンです、良かったら撮影に使って召し上がってください」
カカオ「え、良いの?」
志陽「構いませんよ、いつも来てくださるので、そのお礼です」
カカオ「ありがとう!」
志陽「今日は、ショコラウェディングシリーズのドール君なんですね。かっこいいです」
カカオ「そりゃあ、ここのSNSで「バレンタイン限定デザートプレートと期間限定フォトブース」って書かれたらこの子を連れてくるしかないじゃない! いつもの子達は家で留守番してもらってるよ」
志陽「しかも、衣装作ったりとかじゃなく、ノーマルの格好なんですね。やっぱりかっこいいなぁ」
カカオ「この褐色肌君に似合うのは、この専用のドレスなんだよね…他のじゃしっくりこなくて」
志陽「そういうのありますよね…めちゃわかる…」
カカオ「やっぱりうちの子が良いんですわ…顔と雰囲気がめちゃくちゃ優勝…大天使…」
志陽「大天使君も満足そうですね」
カカオ「ん、わかっちゃう感じ?」
志陽「これ以上にないってくらい、満足そうな顔をしてます」
カカオ「良かった…」
志陽「このドール君のシリーズって面白いですよね。バレンタインとウェディングをテーマに、海外のドール会社が作ったんです」
カカオ「えーと、この褐色肌のアルヅマ君と真っ白い肌の女の子だったよね?」
志陽「褐色肌くんは「アルヅマ」、白肌の女の子は「ベリジャン」って言います。一体20万円弱。抽選販売だったので、セット売りやバラ売りを含めて世界に100体ずつしかいません」
カカオ「その抽選を見事に突破して、この子がうちに来てくれたんだよね。セットでなんてお迎えできなかったから、この子だけにしたの」
志陽「生々しい話ですが、ポンと20万円を出したんですか?」
カカオ「ううん。抽選販売の情報が出た段階で、かなり生活費を切り詰めてなんとか抽選販売までに貯金した…もやしは美味しかったよ、いっぱい食べた」
志陽「遠い目をするしかないですよね…よく頑張りましたね…」
カカオ「で、抽選には落ちるの前提で申し込んで、見事当選して、翌日には振り込んでた」
志陽「仕事が早すぎる」
カカオ「社会人はスピードが命だからね…」
志陽「社会人の鑑がすぎる」
カカオ「この子達って、チョコがモデルなんだっけ?」
志陽「ええ、アルヅマ君は褐色肌でダークチョコレートモチーフ、ベリジャンちゃんは白肌でホワイトチョコモチーフなんです」
カカオ「へー」
志陽「そして褐色肌って希少なんですよ。製造がうまくいないとか金型が特殊だったりするので、普通のドールに比べて価値が高い」
カカオ「言われてみれば、褐色肌のドールってまだまだ少ないもんねー」
志陽「そうなんです、なのでこのドール君達って、かなり企業としても挑戦的なんですよね。こんな綺麗に仕上がるなんて、技術の進歩ってすごいなーって思いますよ」
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