忘却の神様と共に
〜登場人物〜
・|稲禾《とうか》(他)…豊穣を司る神様。寂れた神社でひっそりと暮らしている
・|魁星《かいせい》(他)…学問を司る神様。稲禾の友人
・|陽菜《ひな》(女)…稲禾の元にやってきた女子高生。人ならざるものを見ることができる特別な力を持つ
・|朱莉《あかり》(女)…陽菜の友達。明るく元気で人をからかうのが好き
・|凛華《りんか》(女)…陽菜の友達。クールで若干毒舌な時がある
・村人(女)…稲禾を信仰する村に住む女性。信仰心が人一倍強い
開幕
稲禾 「ふわぁぁ、今日も暇だなぁ」
稲禾 「ここに人が来なくなってどんぐらいたったかな。数十年?数百年?数千年か?……て、そんなに私生きてないな」
稲禾 「………そろそろかな」
間
稲禾 「風が気持ちいいな。……この風に紛れて私も」
稲禾、ウトウトとし始める
魁星、稲禾の後ろから現れる
魁星 「よ!」
稲禾 「ん?嗚呼、魁星か」
魁星 「ありゃ、寝てるの邪魔しちゃった?」
稲禾 「別にいいよ。どうせ暇すぎて寝ることしかすることが無いだけだし」
魁星 「はは、それもそうか。こんな寂れた神社に人も来ないだろうしな。来るとしたら相当の物好きか、肝試し目的だろうよ」
稲禾 「うるさい」
魁星 「すまんすまん。お詫びと言ってはなんだけどこれやるよ」
稲禾 「なんだ?…おお、まんじゅうか!」
魁星 「どうせ最近何も食ってないんだろ」
稲禾 「…まあ別に、神に食べ物は必要ないからな」
魁星 「それでも味覚は存在すんだからたまには食べたいだろ」
稲禾 「うん、ありがとう。いただくよ」
魁星 「どうぞ」
稲禾 「ん〜、やっぱり甘いものは最高だね」
魁星 「はは、喜んで貰えたようで何よりだよ。ほらお茶も一緒に飲めよ」
稲禾 「おお!相変わらず気が利くね」
稲禾、お茶とまんじゅうを堪能する
間
稲禾 「そういえば最近どう?」
魁星 「どうとは?」
稲禾 「元気にしてるかってことだよ」
魁星 「嗚呼、そういうこと。元気だよ。そりゃあ昔よりは社に来る人間は減ったがそれでもまだ地域の人達に親しまれているさ。その証拠に今月末は夏祭りが開かれるらしいんだ」
稲禾 「……よかったね」
魁星 「!悪い、気を悪くしたか?」
稲禾 「いやいいよ。確かに羨ましくはあるが人に親しまれる事などとうの昔に諦めているからね。こうしてお前が私の所に時折遊びに来てくれる。今の私はそれで十分だ」
魁星 「…そうか。嬉しいことを言ってくれる」
稲禾 「どういたしまして…ふわぁ」
魁星 「なんだやっぱり眠いのか?」
稲禾 「気にしないでくれ、いつものことだから。最近はすぐ眠くなる」
魁星 「珍しいな。何かあったのか?」
稲禾 「さぁ?やることが無さすぎて体が動くのを拒否してるのかもしれない」
魁星 「なんだそりゃ」
稲禾 「あはは」
魁星 「やることがないなら境内の掃除でもしたらどうだ?」
稲禾 「ええ…私神様だよ?神が自分で自分の場所掃除するとか情けなさすぎない?なんか威厳がないというか…」
魁星 「へぇ、あんたにもちゃんとプライドがあるんだな。まあ大丈夫だ安心しろ。昔からあんたには威厳のいの字もなかったからな」
稲禾 「え、ちょっと酷くない?」
魁星 「はっはっはっ!」
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