脚本ダウンロードサービス

終末放送

終末放送

一人劇
音声のみを想定

「もしもし、もしもし。聞こえてるかな？」
「あー、あー。うん。多分大丈夫でしょ」
「さて、今日も始まりました！私による、私のためのソロラジオ！リスナーのことなんて一切気にしない！私がやりたいことをやるだけでございます！」
「今日もね、いっぱいコーナー用意したから。もちろん、いつもの恒例コーナーもあるよ。さあ、どれから聞きたい？」
「って、ラジオなんだから反応あるはずないか！てか、そもそも何のコーナーやるか言ってなかったね」
「とりあえず、目についたやつからやるか。じゃあ最初はこれ！『冷蔵庫の奥底から出てきた食品を、とりあえず食べてみようのコーナー』！」
「今日はですね。なんと、生ものです」
「いやはや、リスナーの皆様の、ドン引きする顔が目に浮かぶなあ！」
「大丈夫、腹を壊すことを前提にこっちも用意してるんで！怖くないよ！」
「ああ、そっか。君たちからしたら、腹壊すってこと自体が怖いのか。やだもう、優しいんだから！」
「なんか、汚いとか気持ち悪いって言われてる気もするけど、気にせずに食べていきましょう！大丈夫、死なないからね！」
「というわけで、今回ご用意したのは、イクラの醬油漬けです！」
「海鮮なんて滅多に食べられませんからね。こちらもテンション爆上がりですよ」
「じゃあ、オープン！」
「……」
「君たち、イクラって腐ったらどうなるか知ってる？」
「イクラの形してないんだよ」
「なんか、粒じゃなくて、スムージーみたいな液体になってる……」
「いや、分かってたよ？腐ってるんだし、変な臭いしたり、味したり、腹壊したりするのはさ。でもさ？まさか、原形を留めてないなんて思わないじゃん……」
「ああ、ちなみに、なんで開けてないのにイクラって分かってたかっていうと、冷凍のパックにそう書いてあったからです。冷凍されてたから期待してたのに……」
「まあ、落ち込んでてもしょうがないか。はい。食べます」
「命に感謝して、いただきます！」

液体をすする音

「あー……」

窓を開ける音
窓を閉める音

「とりあえずね、窓から捨ててきたんですけどね。はい。多分、想像してた通りだと思います」
「一応ラジオってていだから食レポすっか……。なんかですね、海鮮臭さってあるじゃないですか。あの成分のみで、シェフの気まぐれジュレ作りましたよみたいな感じ」
「はあ……。やっぱり、冷蔵庫の奥底なんて、まともな食べ物ないのかなあ」

煙草の火をマッチでつける音
煙草を吸う音

「今日吸ってるのは、えーっと、これはどこのだっけ。いやわかんないや。パッケージの文字が読めん」
「……学がないって馬鹿にされた気がしますが、次のコーナーに行きましょう！」
「お次は、『最近読んだ本の紹介コーナー』！」
「いやー、やっぱり本はいいですよね。いつまでたっても価値が色褪せることのない、素晴らしい芸術です！」
「今日はですね、セネカの「生の短さについて」でございます！」
「先週は「ソクラテスの弁明」を紹介しましたけれどもね、やっぱり人間は行きつくところまで行きつくと、哲学や思想の新書に走っちゃうんですかね」
「ということで、セネカでございますけれども。まあ難しい！けれど、昔この本を紹介する動画を見まして。一度は読んでみたかったんですよ」
「ざっとご紹介しますと、短い人生をどう無駄に、自分にとって豊かになるために活用していくかっていう考え方が滔々と語られておりますね」
「所有をし過ぎると守ることに必死になってしまうから、地位や名誉や財産に囚われ過ぎるなとか。仕事の忙しさに殺されるのではなく、余暇をもって賢明な先人から学びを得るよう努めるべしとか。そういった、現代にも通じる普遍的な教えが書かれていましてね、月並みですが、色々と勉強になった一冊でした」

煙草を押し付けて消す音

「ただ残念なことに、このセネカさんも邪知暴虐な王に振り回されて、自害を命じられて死んだらしいです。ああ、邪知暴虐とは言いましたが、メロスの話とは別ですよ。あれは改心しますけど、別にこの王様は疑心暗鬼のままでしたから」
「……もしかして、難しすぎた？」
「ごめんごめん！普段本を読まないリスナー諸君には、ちょっと難しかったかな？いやー、私ね？本当は賢いからさ？君たちのレベルに合わせた言葉遣いができなくなっちゃうときがあってさ！ほんと、ごめんね？」
「……なんかヘイトの溜まった声が聞こえてきた気がしたので、ストレス発散になりそうな次のコーナーにいきましょうか！」
「お次はですね、『今日のお試し死に方コーナー』！」
「いやー、これを楽しみにしてきた方も多いんじゃないでしょうか！なんたって、うちの目玉企画であり、他のパーソナリティや配信者ではなし得ない芸当ですから！」

1/2

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！