旅路
■キャスト■
男
少年(青年)
若い男
修道女
神父
画家
若い女
少女
■プロローグ■
青年、緞前登場
青年 お、このあたりで人を見かけたのは久しぶりだな。ほら、こんな世界じゃどうせ暇だろう。お前たちに少し面白い話をしてやるよ。なに、遠慮は要らないさ。今からする話は決して作り話なんかじゃない。彼はたしかにこの世界に存在していた。え?この言い方は死んでるみたいだって?あはは。それはどうかな。そうかも知れないし違うかもしれない。じゃあ、俺の世間話、聞いていってくれよ
■Scene1■
緞帳開く。風が吹く音。見渡す限りの砂の大地に岩が1つ。そこには若い男が1人座って煙草をふかしている
若い男 さてと。そろそろ次の場所に移動するかな
男、登場
男 やぁ、君は旅人か?
若い男 あぁ、そうだよ。あんたは?
男 私もそんなところさ
若い男 そうか。あんたはなんのために旅をしているんだ?
男 特に目的はない。ただ旅が好きなだけだ
若い男 へぇ、そうなのかい
男 あいにく私は不自由のない暮らしに興味がなくてね
若い男 そうか...
男 ...そういう君はどうなんだ?
若い男 俺は豊かな生活ができる場所を求めて旅をしているんだ。もう歩き始めてから1ヶ月はたつかな。そろそろ見つかるといいんだが
男 そうだったのか。家族はどうした?
若い男 俺は家庭なんか持ってねぇよ。まぁ、おふくろはいたが、ついこの前旅立ったよ
男 そうか。それで今は一人で歩いているんだな
若い男 そういうことだ
男 今の話を聞いたあとで悪いんだが。君の生きている目的を聞いてもいいか。なぜ君はこんな終末世界で生き続けているんだ?
若い男 …確かに、何でだろうな。俺にもそんなことわかんねぇよ。ただ、人は生きる理由がなくても、惰性で生きていけるものなんじゃないか?少なくとも俺は、今すぐに生きている意味は見つかりそうにないが、死にたいって思うこともないぜ
男 なるほど。その考えは興味深い
若い男 ていうか、あんただってそうなんじゃないか?
男 確かにそうかも知れないね
若い男 まぁ、だから、俺は生きることに対して特別深い意味はねぇよ。まぁ、強いて言うなら死ぬのが怖いからっていうのはあるかもな
男 なるほど。死ぬのが怖いからか
若い男 つまんねぇ答えだったら悪いな
男 いやいや。そんなことはないさ。君の考えは興味深いよ。ありがとう
若い男 それならよかった
男 じゃあ、私はそろそろ行くよ。君もすることがあるだろう
若い男 あぁ、それもそうだな
男 それじゃあ、君が無事に着くことを祈っているよ。楽しい時間だった。buona fortuna(ボナフォルトゥーナ)
若い男 あぁ。ありがとな
■Scene2■
場所は教会。修道女と神父、板付き。男、登場
男 すまない。少しお邪魔してもいいかな?
修道女 あら、この教会に人が来るなんて珍しいわ!
神父 本当だ。さぁさぁ旅人さん。こちらにお座りになってください
男 ありがとう。そういえばこの教会は周りに人の気配が全くないが
神父 はい。ここ、deus(デウス)教会は町の方々を導くような場所ではないのですよ
男 なるほど。そうだったのか
修道女 そうなんです。どちらかというと旅人の方々への教会なんです
男 そうか…しかしすまないな。私は神とやらを信仰していない身なんだ
修道女 そうでしたか。それでもわたしたちのすることは変わりませんわ。あなたの旅の無事を祈らせてもらいます
男 そうか。ありがとう
神父 それじゃあ私は色々と準備をしてくるよ。旅人さん、少しばかり待っていてください
神父、退場
男 それじゃあ待っている間に少し話に付き合ってくれないか
修道女 ええ。私でよければ聞きますよ!
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