サンタ、AIを打つ。
『サンタ、AIを打つ。』
【キャスト】
父 父親で、感情特化型AI「キズナ」の開発者。毎日忙しく働いている。
母 専業主婦。夫が開発した「キズナ」を使い倒している。
息子 小学校低学年くらいの一人息子(娘でも可)。私立小学校に通っている。
キズナ 感情特化型AI。※音声のみ。読み上げソフトなどを活用して音源を用意する。
部長 父が勤務する開発会社の部長。
サンタ あわてんぼうのサンタ。タイミーから応募した。
店員 家電量販店の店員。
※舞台装置として、スーパーコンピュータかサーバーを模した大きな箱状のものを用意する。これを場面転換で出し入れする。中に人が入っておいて、スプレーなどで煙を出す。
【板付き】
家、おそらくタワーマンションの一室。リビングの椅子が1脚、上手側にある。母が上機嫌で何か家事をしている。下手から息子が入ってくる。
シーン1
息子 ただいまー……。
母 あら、カズくんおかえりなさい。おやつ用意してあるわよ。この前いただいたバームクーヘン。
息子 うーん、いらない。
母 あら、しょっぱいもののほうがよかった?
息子 ううん、今はいいや。手洗ってくる。(上手側へ)
母 カズくん?……うーん……(母、おもむろに板状のデバイスを取り出して、後ろから息子を撮影?する)。キズナ、カズくんが元気無さそうなのはどうして。教えてちょうだい。
キズナ かしこまりました。……カズキ様の体温や心拍数、その他表情や挙動などを総合的に分析した結果、この後の英会話のレッスンが気がかりである可能性があります。
母 え、どういうこと。
キズナ あくまで推測ですが、レッスンに行きたくない気持ちがあるのでしょう。それをお母様に言い出しづらいので、元気がないのかもしれません。
母 あらそんな……思ってもみなかったわ。ありがとう、キズナ。
キズナ どういたしまして。お役に立てて嬉しいです。他にも質問がありましたら、いつでも/(母、キズナが言い終わる前にデバイスを切る)
母、息子に近づく。
母 ねね、カズくん。ママさ、久しぶりにお寿司が食べたくなっちゃったんだ。今日は英会話お休みにして、一緒に回転寿司に行かない?
息子 え?……でも、お母さん英会話は毎週行かなきゃダメって。
母 うーん、そうだけど。でもママどうしてもお寿司食べたいんだよね。一緒に行こうよ。
息子 でもでも、先生もちゃんと続けないと英語話せなくなるよって。
母 大丈夫だよ。たまにはお休みしてもいいじゃない。先生にはママからお電話して伝えておく。
息子 ……そーう?
母 そうよ。それに、カズくん最近頑張ってるからご褒美よ。
息子 へへ、なら行く。
母 よし、決まりね。……そうだ、英会話の新しい先生ってどんな人なの?最近聞いてなかったわよね。お寿司食べながら、ママに教えて。
息子 うん、わかった。
母 いつもの銚子丸でいい?
息子 僕くら寿司がいい。
母 えー、くら寿司? ダメよあそこは、庶民的過ぎる。最低でも1皿300円からじゃないとお寿司じゃないわ。
息子 お母さん何言ってるかわかんなーい。
母 いずれ分かるわ。まあでも、今日はくら寿司にしようかしらね。
息子 うん、行こ行こ。
母と息子、下手にハケていく。照明変化。下手から父、母の順に入り。
父 すまないね、最近帰りが遅くて。(ジャケットを脱ぐ)
母 いいのよ、いつもご苦労様。(ジャケットを受け取る)そうだ、今日も「キズナ」が活躍したのよ。
父 そうなのか?
母 ええ、キズナのおかげで、カズキの悩みが分かったのよ。ほら、英会話レッスンの先生が変わったって言ってたじゃない?新しい先生とうまく合わないみたいで。
父 ふーん、そんなことが。
母 そうそう、私もぜんぜん気づかなかったんだけど。今日はレッスンお休みさせて、気分転換に回転寿司に連れて行ったわ。
父 なるほどね。感情読み取りの精度もかなり上がってきたのかな。
母 そうよ。あなたが開発したAIは最高なのよ。なんでもっと普及しないのかしらね。私、ママ友にも勧めてるんだけど。
父 自慢っぽく聞こえちゃってるんじゃないか? まあ、ユーザーを増やしていくのは今後の課題ではあるな。
母 ええ、あなた頑張ってね。……あ、カズキもう寝てるから、様子を見るなら、そーっとね。
父 いや、別にいい。(上手ハケ)
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