にじ
短編集『にじ』

「友情」
「車内」
「献血」
「張込」
「喪失」
「作家」

●上演について

    舞台上の両端に椅子を用意し、出番のない役者はそこに座って待機する。
    座っている役者は、演技をせず、観客と同じ立場で芝居を眺める。
    つなぎのブリッジ音楽や芝居中の効果音を入れる場合は、座った面々のいずれかが、その場で音楽を鳴らしたり、声を発したりする。
    「張込」の老婆や、「作家」の各登場人物の登退場も、その椅子から行う。
    転換の補助は、出番のない役者が行う。



「友情」

●登場人物

    岡田
    西野
    サクラの木(女性)

        岡田と西野、花見をする場所を探して歩いている。
        サクラの木を演じる役者は、胸に『満開のサクラ』と書いた紙を貼った状態で立っている。
        岡田と西野はサクラの前で立ち止まる。

岡田   「おお、満開の桜の木がある」
西野   「しかも、誰一人場所をとっていない」
岡田   「ここにするかい?」
西野   「ちょっと待ってくれないかい?」
岡田   「どうしたんだい?」
西野   「もう少し明るい方に行きたくないかい?」
岡田   「どうしてだい?」
西野   「ここだと日陰になって、桜の花がキレイに見えないじゃないか」
岡田   「じゃあもう少し移動しようか」

        二人、サクラの木との距離を保ったまま、日なたを探すようにして少し移動する。
        サクラは二人の動きに合わせて移動し、日当たりのいい位置に立ってあげる。

岡田   「ここならどうだい?」
西野   「日なただね」
岡田   「座ろうか」
西野   「ちょっと待ってくれないかい?」
岡田   「どうしたんだい?」
西野   「ここだといささか、太陽がまぶしすぎやしないかい?」
岡田   「(太陽の方向を見て)そうかい? 僕はあまり気にしないけれど」
西野   「それに、ここだと逆光になって、桜がよく見えなくないかい?」
岡田   「じゃあどうしようか」
西野   「さっきの日陰と、ちょうど半分くらいの位置がいいんじゃないかい?」
岡田   「じゃあその位置を二人で探そうじゃないか」

        二人、さきほど立っていた位置に戻る。サクラも二人に合わせて移動する。

岡田   「このあたりならどうだい?」
西野   「まだ日なたじゃないか」
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