屋上物語
【登場人物】
  男
  少女
  刑事
  会社員の男




      とある日。
      どこかのビルの屋上。
      人影はなく、風の音だけが聞こえる。
      やがてもめているような声が聞こえ、男と少女がやってくる。
      男は拳銃を持って、少女を人質としているようだ。
      しかし少女はちっとも恐がっていない様子。
      二人、言い合いながら屋上の真ん中までやってくる。

少女  ちょっと痛い!
男   うるせえな。お前自分の立場わかってんのかよ。
少女  わかってるわよ。あんたはそこの角のコンビニに入った強盗犯。
    そして私は、偶然にもその場に居合わせてしまった、何とも運の悪い女子高生。
男   だったら少しは怯えたらどうなんだ?
少女  なんでよ。
男   いや、なんでって・・・

      刑事の声がメガホンを通して聞こえてくる。

刑事(声) おい、もう逃げ場はないんだ。諦めて逮捕されたほうがいいんじゃないのか?!
少女  ほら、どうすんの? もう刑事が来たわよ。つまんない。
男   お前本当に自分の立場理解してんのか?
刑事(声) おい! 聞いてるのか?!
少女  わかってるわよ。でもつまらないじゃない。
男   つまらないって・・・
少女  だってせっかく普通じゃ体験できないことやってんのよ?
    そう簡単に終わっちゃったら、つまんないじゃない。新聞にも載らないのよ?
男   んー、それはちょっと・・・って! あのなあ、俺はこれ(拳銃)持ってんだぞ?
少女  そんなの見りゃわかるわよ。
男   いつ引き金引くかわかんねえんだぞ?
少女  そぉねえ・・・。
男   「そぉねえ・・・」じゃねえだろ?! 殺されるかもしれねえんだぞ?
    普通だったら、刑事が来たら喜ぶもんだろ?!
刑事(声) おーい!
少女  別に。私、逃げようと思えば逃げられるもの。
男   え?

      少女、男を背負い投げする。

男   いててて・・・。
少女  意外と弱いのね。
男   意外と強いんだな。
少女  柔道三段なの。私。
男   え?
少女  ちなみに背負いは得意分野よ。
男   ・・・腰打った・・・。
少女  大丈夫よ。手加減したから。骨は折れてないわ。
男   そういう問題かよ。
少女  一本背負いもする?
男   遠慮しておく。

      刑事登場。
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