紡ぎ詞
【登場人物】
神長倉 あやめ(かなくら):高等部二年四組、出席番号八番。演劇部副部長。
御堂 つかさ(みどう):高等部二年四組、出席番号三十番。演劇部部長。
鳥居 みらい(とりい):高等部二年一組、出席番号十八番。元演劇部員、今は写真部。
春山 くるみ(はるやま):中等部一年二組、出席番号二十六番。
新葉 こより(にいば):中等部一年一組、出席番号二十五番。
流鏑馬 まお(やぶさめ):演劇部の顧問。
榊原 かおる(さかきばら):卒業生。劇団員。『チョコチップメロンパン』。
八城 ひとみ(やしろ):中等部一年二組の担任。
※ほか、SE、少女の声
◆『裏庭』とは…
鳳林女学院演劇部の卒業生であるチョコチップメロンパン(=榊原かおる)が、
高等部一年の時に作った戯曲で、過去に一度だけ上演されたことがある。
小さい頃に祖母からもらった古い本を見つけた主人公が、
懐かしさに浸りながらそれを読んでいると、いつの間にか本の中に入ってしまい、
物語の登場人物である少女に出会う。
しかしその少女は本来紡がれるべきストーリーを忘れてしまっており、
主人公は少女と共に物語の続きを探していく、という話。
【1】
開演のブザーが鳴る(本ベルと兼ねる)。
暗転。
SE その一瞬、僕らは魔法使いになる。
現在より数年前の秋。鳳林女学院文化祭。
光の溢れる舞台の上で、芝居をしている人影。
SE 観る人にかける魔法。舞台を世界に変える魔法。自分自身にかける魔法。
その一瞬が終わればすべて消えてしまう、夢。
まだ幼い春山くるみと新葉こよりが、客席から見ている。
また別の場所からは、小学五年生の御堂つかさが見ている。
やがて照明が落ち、幕が下りて、盛大な拍手に包まれる。
こより (手を叩きながら)すごいね。アンナちゃん、上手だったね。
くるみ (呆然として、しかし目は輝いている)…
こより クルミちゃん?
くるみ 決めた! あたしもあれ、やる!
こより えぇっ⁈
くるみ あたしもアンナちゃんとおんなじ学校に行って、あれやる!
コヨリちゃんも、いっしょにやろうよ!
こより えっ、わ、わたしも?
くるみ できるよ! コヨリちゃん、バレエもじょーずだもん。ゼッタイできるよ!
こより …じゃあ、わたしもやる! クルミちゃんといっしょに。
くるみ やったぁー!
こより けどクルミちゃん。ここ、おべんきょできないと入れないんだよ?
くるみ う、そ、そうだった…。
こより わたしがおしえてあげる。
くるみ ほんとー?
こより いっしょにがんばろうね。
くるみ うん、がんばろうねー。
くるみとこよりはそこで約束を交わす。
一方、座ったままのつかさはパンフレットに目を落としながら、
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