しあわせのうた
「しあわせのうた」

少年(少女)
女(母)

第0場

 暗い場所で一人佇む少女。
 何かをつぶやいている。その声は、声にならず、周りの音にかき消されている。

少    (嫌だ…。もう嫌だよ…。誰か…。誰か……。)

 少女、追われるように、下手へはける。

第1場

 砂漠のような荒野。
 少年のような人物が、下手より歌を歌いながら登場。
 
少    ♪「東に住む人は しあわせ 生まれたばかりの 太陽を 一番先に 見つけることが 出来るから
    北に住む人は しあわせ 春を迎える よろこびを 誰より強く 感じることが 出来るから」

 立ち止まり、水を飲む。
 一息ついて また歩き出し、再び歌い始める。

♪「南に住む人は しあわせ いつでも花の 首かざり 愛する人に 捧げることが 出来るから
    西に住む人は しあわせ いつも終わりに 太陽を 明日の空へ 見送ることが 出来るから」

 女性が、上手からふらふらと出てくる。

女    ああっ

 みたいなことを言いながら(大げさに)倒れる。
 少年、少しの間、女性を見ているが、そのまま女性をスルーして通り過ぎようとする。
 女、なんとか、通り過ぎる直前の少年の足を掴み、

女    ちょ、ちょっと待って!
少    なんですか?
女    スルーしないで!
少    いやあ。ちょっとびっくりしちゃって。
女    そんな理由!?
少    元気そうで何よりです。では。
女    だからちょっと待ってよ!
少    何でですか?
女    ちょっと、飲むもの分けてくれない?のどが渇いちゃって。
少    のどが渇いて倒れたんですか?
女    そ、そうよ。
少    でも・・・。水は貴重ですし・・・。
女    た、助けてあげるから!
少    え?
女    あなた、旅人でしょ? 見たところ、まだ、小さいみたいだし、一人じゃ大変でしょ?
少    いや(そんなに)
女    (さえぎって)ほら、旅は道連れ世は情けっていうじゃない。
少    僕、「道連れ」って言葉、あまり好きじゃないんですよね。
女    何で!?
少    なんか、「地獄に道連れだ〜。」とかって言うじゃないですか。あ、「地獄に道連れ」を英語で言うと、「Another One Bites the Dust」になって、直訳したら、「もう一人も砂を噛む」になりますね。こんな砂地で縁起でもない。
女    何を言って・・・。
少    砂を噛む、あのジャリって音、頭に響くんですよね。あ、別に今のは砂の「砂利」とかけた訳ではないですよ。
女    ちょっと待ってってば。
少    (さらっと)冗談です。
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