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美術館長の憂鬱

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館長（男・５０～６０代）……もともと景気のいいころに美術館に入り、美術館に思い入れがある。めちゃくちゃ絵が好きだが、人は苦手で館長室から出てこない。最初のシーンはZOOMの映像でそのほかのシーンは舞台上に出てくる。
中里（女・３０代）……新卒からずっと美術館で働いている学芸員。まじめで経営のことも気にしている。
丸山（男・４０代）……美術館の中で一番の古株学芸員。ディズニーランドが好きでいつも耳とかをつけてテンション高く、小学生とかに案内している。
坂崎（女・３０代）……里田に付き合わされてテンションの高い案内を一緒に無理やりさせられているがそれがいつも不服。もっともまとも。
高島（男・３０代）……美術館の財源となっている会社の担当者。もともと営業職でバリバリやっていたが美術館担当にされて不満。そもそも美術館なんかに援助しても仕方ないと思っている。照明と兼務。
加藤（男・３０代）……前同。ただし、元々美術館を援助していた経緯もよく知っており、美術館に好意的。音響と兼務。
島村（男・３０代）……地元商工会の会長。都心で働いていたけど郊外の地元の商店街に戻ってきてクリーニング屋をついでいる。いつも薄っぺらい企画を持って連絡してくるが忙しいらしく全然直接は来ない。変な会議にいっぱい参加している。出番はすべてZOOMの映像。

第１場
　客入りからのM０が大きくなって暗転。明転。
郊外の美術館。ある程度高い位置に絵をかけつつ、舞台の中心は机といすとかがあって打合せスペースみたいな感じ。若干抽象的な雰囲気。見学シーンは照明で絵と真ん中に立つ丸山、坂崎にだけ目が行くような感じにしたい。また、ＺＯＯＭの関係でスクリーン幕等が中央に必要（白い壁に映るなら白い壁でも可）。
学校が見学に来ており、丸山と坂崎が案内している。いずれも猫耳をつけている。
　
丸山　はーい、旭小学校の皆さんおはようございますにゃーん。
生徒　（音響でまばらに）おはようございまーす。
丸山　今日はこんな天気がいいような悪いようなよくわからない日に私たちの唐沢真梨絵記念美術館にお越しいただきましてありがとうございますにゃん。今日は、この美術館の学芸員の丸にゃんとー（坂崎に圧力をかける）
坂崎　（いやそうに）坂にゃんが
丸山　ご案内させていただきますにゃん。まず、この美術館の名前にもなっている唐沢真梨絵って知ってますかにゃん？
生徒　（音響でまばらに）知らなーい。

坂崎　（ぼそっと）最後のにゃんはさすがに無理があるのでは？
丸山　じゃあ、説明するにゃん。この美術館の名前になっている唐沢真梨絵はこの近くに住んでいて動物が大好きだった画家なんだにゃん。代表作は大きなライオンの絵だけどそれ以外にも色々な動物の絵があるから探してみるんだにゃん。残念ながら丸にゃんの絵はないんだにゃん。
坂崎　（ぼそっと）そりゃそうでしょ。（切り替えて）今日は皆さんの貸し切りなので、順路とかは関係なく、自由に見ていただいて結構です。
丸山　です？（圧力をかける）
坂崎　ニャン。（やけくそのように）ただ、館内は、飲食禁止なので食べちゃダメだニャン。あと、絵には絶対に近づかないようにするんだニャン。
丸山　じゃあ、前置きはこんなところだにゃん。あとは、感じるままに見てくるんだにゃん。いってらっしゃいだにゃーん。

オープニング音楽入る。ポップな雰囲気の曲。手を振って見送る丸山と坂崎。ちょっとするとやってられるか、とばかりに坂崎が猫耳を床にたたきつけて帰る。それを拾って追いかけてくる丸山。事務スペースみたいなところに中里がやってくる。資料を見て溜息。そこに坂崎がやってくる。愚痴を言う。丸山が追っかけてくる。多少会議をしようとするが、丸山がダンスをしようみたいな感じで二人を無理やり立たせて躍らせる。館長も楽しそうな様子を見て出てきて一緒に踊っている。サビ終わりで音楽フェードアウト。丸山、館長ははける。坂崎と中里は残る。

第２場　打合せスペース。
中里　館長室つないでくれる？
坂崎　今からつなぎます。ちょっと待ってください。館長、今日は何作ってますかねぇ。
中里　さぁ、この前久しぶりに館長室入れてくれたときは等身大の丸山さん作ってたわよ。猫耳つけたやつ。
坂崎　うわー、引くー。
中里　まぁでも女性職員の作ってないだけましなのかも。
坂崎　いや、それ作ってたら完全なセクハラですよ。
中里　でも、館長だから。不適切にもほどがあるから。
坂崎　そこはあきらめないでください。そうやって中里さんが甘やかすから館長室からも出てこないじゃないですか。
中里　ＺＯＯＭとかない頃はもっと見回りとかもしてくれたんだけどねぇ。
坂崎　文明の進化とともに退化していってる……。あ、つながりますよ。
館長　おはよー。みんな元気かなぁ？
中里・坂崎　（口々に）おはようございます。
館長　早速だけどこの絵を見てくれないか。これは大阪万博のキャラクター『ミャクミャク』と吉村大阪府知事の種族を超えた禁断の愛を世紀末美術の要素を入れて描いた物なんだけど、どうだい、よくかけてるだろ？
中里　ミャクミャクってあの可愛くない奴？
坂崎　何でその二人を掛け合わせた
館長　この絵のポイントはね、ミャクミャクのたくさんある目の一つ一つに小さな吉村知　事を詳細なタチッで描くことでミャクミャクの断ち切れない強い思いが・・（絵の説明続ける）
中里　ああもうそういうのいいんで、たまにはこっちに来て会議に参加してください
館長　うーん・・・（絵をみながら）違うな！
中里　坂崎　え！？
館長　だめだ！吉村では弱すぎる・・・そうだ！ノックだ！吉村を横山ノックに替えることでより官能的で退廃的な雰囲気を・・よしっ！早速描き直してくる！
中里　ちょっと待ってください！
館長　えーでも今すごい創作意欲が・・・
坂崎　ダメです！
館長　分かったよ、もう、しょうがないなぁ。
中里　あー何かすごい脱線したじゃないですか。もう始めますよ。
坂崎　いや、ちょっと待ってください。今日は、秋祭りの話なんで商工会の島村さんも参加の予定です。
中里　あぁ、そういえばそうだったわ。
坂崎　あと丸山さんも来てません。

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