赤腕の亡霊
─────【登場人物紹介】─────
クリム(♀(or♂)):旅人。左腕に身の丈に合わない大きさの義手を身に着けており、普段は布で隠している。訪れた街の酒場にて、『赤腕の亡霊』の話を聞くことになる。想定年齢は20台後半~30台前半。
リズ(♀):『アンジー・メカニック』で働く機工技師見習い。『赤腕の亡霊』に強い執着を持つ。想定年齢は13~15歳。
ビル(♂):リズの祖父であり、熟練の機工技師。『アンジー・メカニック』のオーナーであり、酒場の常連。想定年齢は60歳以上。
マスター(♂):酒場のマスター。情報通。訪れた旅人のクリムに『赤腕の亡霊』の話をする。想定年齢は30台後半~60歳。

─────【役表】─────
クリム(♀(or♂)):
リズ(♀):
ビル(♂):
マスター(♂):

─────【本編】─────

(クリム、酒場に入る)

マスター「いらっしゃいませ……おや、旅の方でしょうか?」
クリム「一見(いちげん)さんはお断りかい?」
マスター「いえいえ。こちらの席へどうぞ」

(クリム、案内された席へ移動し、座る)

マスター「お飲み物は何に致しましょうか?」
クリム「エールで」
マスター「かしこまりました」

(マスター、エールを提供しながら)

マスター「……お客様。旅の方でしたら、老婆心ながらひとつ。今の時期、この街には長居しない方が良いかと」
クリム「と、言うと?」
マスター「すこし、治安の悪いニュースが広がっておりまして。ええと……あった、こちらの新聞をご覧ください」

(クリム、マスターから渡された新聞を読む)

クリム「……『赤腕の亡霊』?」

(間)

マスター「お客様は、『赤腕』についてご存知でしょうか?」
クリム「……ああ。先の大戦で大きな戦果をあげた、我が国の英雄の事だろう?」
マスター「ええ。鬼神のごとき強さをもって、その手で絶え間なく大量の敵兵を殺してまわったとか。その腕は殺した敵兵の返り血に染まり、その姿をもって『赤腕』と呼ばれるようになった、と。終戦間際に名誉の戦死を遂げた、と言われております」
クリム「……。それで、その『赤腕』がどうしたんだ」
マスター「ここ最近、このあたりで民間人がズタズタに刻まれて殺される事件が連続して発生しています。その凄惨(せいさん)な殺され方から、死した『赤腕』の怨念が人を殺してまわっているのではないか、との噂が立ち。いつからか、犯人は『赤腕の亡霊』と呼ばれるようになりました」
クリム「……なるほどな」
マスター「『赤腕の亡霊』は未だ見つかっておらず……そのため、街の人々は不安に包まれております」
クリム「だから長居しない方が良い、ということか。……ご忠告感謝する。用事を済ませたら早々に発つことにしよう」
マスター「失礼ながら、用事とは?」
クリム「無煙炭を探しているんだが、どこか買える場所を知っているだろうか?」
マスター「無煙炭、ですか?」
クリム「少し要り様でな。酒場なら何かしら情報があるかと思ったんだが」
マスター「なるほど。そうですね……何せ希少なものですから、扱っている所と言われると──」

(リズ、酒場に入ってくる)

マスター「いらっしゃい──ああ、あなたですか」
クリム「……マスター、あの子は未成年じゃないか? 子供が酒場に入ってきていいのか?」
マスター「ええ、あの子は──」
リズ「ちょっと待って!」

(リズ、クリムに近づく)
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