「ソウル・ザ・ペアレンツ」カンゲキ大賞選出作品
【本編】
    舞台は瑠璃の実家の居間で、前面が縁側になっている。
    下手奥にはのれんがあり、玄関へとつながっている。上手には襖があり、隣の部屋につながっている。
    中央奥にも両開きの襖があり、廊下につながっている。
  
    居間の中央にはちゃぶ台。
    下手奥には棚、ゴミ箱があり、棚の上に水槽が置かれている。
    上手の手前にはルンバ。
  
    部屋の中には瑠璃の父親、智大がいる。腕にアップルウォッチをつけている。
    瑠璃が母親と話している声が聞こえる。
  
   瑠璃(声)「ん、なに? 大丈夫。あとから連れてくるから。うん、はーい」
  
    瑠璃、上手から部屋に入ってくる。
   
   瑠璃「ちょっと、着替えてよ」
   智大「自分の家にいるんだ。普段通りで何が悪い」
   瑠璃「服、逆だよ」
   智大「あ」
   
    智大、上着の表裏を直す。
   
   瑠璃「っていうか、大丈夫なの?」
   智大「家のことはなんとかな。ほらその、ルンボ」
   瑠璃「ルンバね」
   智大「ルンバも買ったし」
   瑠璃「それもなんだけど、お母さん。自力で起き上がれないみたいだし、言葉もうまく出てこないじゃん。前より悪くなっていない?」
   智大「心配するな。こっちはこっちでなんとかやっているんだから。母さんもな、ああ見えて中身は元気なんだよ。それに、何かあればこれに通知が来る
   瑠璃「アップルウォッチ」
  
    葵、下手から入ってくる。 瑠璃に買ってもらった帽子をかぶっている。
   
   葵「ただいまー!」
   瑠璃「おかえり」
   葵「……来てる?」
   瑠璃「まだ。でも、もうすぐだと思う」
   葵「おぉー。おおー!」
   智大「落ち着け」
   葵「いや浮き足立っちゃって。さっき気づいたんだけど、俺、(上着を)裏表に着てた」
   智大「気をつけた方が良いな」
   瑠璃「あ」
   葵「さっそく付けてますよー。ありがとね、東京にしか売ってないらしくて」
   瑠璃「全然」
   葵「相手、慎吾さん、だっけ?」
   瑠璃「そう。長島慎吾さん」
   葵「写真とかないの?」
   瑠璃「あるよー」
   
    瑠璃、葵に写真を見せる。
   
   葵「あらイケメン」
   瑠璃「ふふー」
   葵「え、どこが好きなの?」
   瑠璃「んー、やっぱ性格かなぁ〜」
   智大「出身は?」
   瑠璃「向こうだけど」
   智大「シティボーイか」
   葵「東京に染まっている〜」
   瑠璃「別にでしょ」
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