コメディ「十字路」105分
第1話「ドッペルゲンガー」
【登場人物】
田畑:精神科医
柏木紗枝:看護師、カチューシャをしている
三輪桃子:患者、眼鏡をかけている
【本文】
舞台は精神科医の診察室。精神科医の田畑と三輪が話している。
三輪、紙袋を持っており、中には手土産が入っている。
下手は待合室、上手は処置室に繋がっている。
田畑「ドッペルゲンガー」
三輪「はい」
田畑「というと、あの」
三輪「ハイ、あの」
田畑「出会ったら死ぬという」
三輪「はい、その」
田畑「……なるほど」
三輪「信じられないですよね。でも本当なんです。行ったはずのない場所で私を見たって言われたり、身に覚えがないのに私にお金を貸したって言う友達がいたり、バイト終わり誰かにつけられているような気がしたり! ……先生。私、閉鎖病棟行きですか?」
田畑「いえ、そういうわけでは」
三輪「わかっているんです。自分でも馬鹿馬鹿しいってことは十分! でも、どうしてもその考えが私の頭から離れないんです。ドッペルゲンガーが私を殺そうとしていて、私を今も探しているんじゃ無いかって! あ、あそこ! 今あそこから誰かが覗いていたら怖いかもしれません!」
田畑「……じゃあ今の所は大丈夫なんですね」
三輪「はい。でも覗いてたら怖いかもしれません!」
田畑「確かにもしそうなら怖いですが」
三輪「ですよね。閉鎖病棟行きですか?」
田畑「いきません。というかありません」
三輪「あ、本当に誰かが覗いている気がしてきました。やっぱりいるんですよ! あーやばいやばい私だってバレたら殺される!」
三輪、持ってきた紙袋を頭にかぶる。中に入っていたお土産のお菓子が床に落ちる。
田畑、上手を覗く。
田畑「大丈夫、誰もいませんよ。処置室があるだけです」
三輪「ほんとですか?」
田畑「はい」
三輪「あ、先生が覗く前に逃げたとか!」
田畑「ありえません。外につながる出口はないですから」
三輪「じゃあ、そうだ、先生がドッペルゲンガーの仲間ってことはないですか? 嘘をついて私を連れて行こうとしているんです!」
田畑「そんなことしませんって」
三輪「だったら宣誓してください! ドッペルゲンガーの仲間じゃないって宣誓してください。先生、宣誓してください」
田畑「えー。私は、ドッペルゲンガーの仲間ではありません」
三輪「そんな言葉に何の意味があるんだ」
田畑「ほら、宣誓しましたよ」
三輪「わかりました先生を信じます。先生を信じた上で自分の目で確かめてきて良いですか?」
田畑「どうぞ」
三輪「ありがとうございます、あ、それ(床に落ちてるお菓子)、父からのお土産です」
三輪、上手にハケる。
田畑「ふう」
紗枝、下手からやってくる。
紗枝「先生。受付終了のプレート出しちゃいましたけど大丈夫ですよね?」
田畑「ああ、はい、ありがとうございます」
紗枝「全然信用されてなかったですね」
田畑「まあ不安なんでしょう」
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