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ソワレを待ちながら

　　　　ソワレを待ちながら
　　　
　　　
　　　　　　　　　　　　　　筑田周一作
　　　　キャスト
　　　　（水上　梨々花）　　
　　　　佐永　蘭々　
　　　　桃野　瑠衣
　　　　桜山　蕗星
　　　　月瓶　枇杷子

１　歓声が轟いている。コンサートの熱狂。幕が開くと、アイドルグループ「フェイキーゴールド」の楽屋。昼公演が終わり、弛緩した空気が流れている。夜公演まではまだ時間がある。メンバーの佐永、桃野が机に突っ伏して寝ている。間。マネージャーの月瓶枇杷子と別グループ「ユニシス」の桜山　蕗星が入ってくる。
桜山　蕗星　おはようございます～。（語尾の「す」が無声化せずに「ウ」の母音まで発音する癖がある）
月瓶　　　まだ寝てるんですか。仕事ですよ。
蘭々　　　今何時？
月瓶　　　三時を回ったところです。
瑠衣　　　（伸びをしながら）……まだ全然時間あるじゃん。
月瓶　　　仕事です。
ロゼ　　　そうだよ、仕事仕事。
蘭々　　　誰？
瑠衣　　　あれ？……え？さく？！
蘭々　　　桜山、蕗星？
ロゼ　　　もも、久しぶり～！昼公演良かった～！もう圧倒された。
瑠衣　　　あ、見てくれてたの？
ロゼ　　　観にくるに決まってるでしょ！研修同期なんだから～！
瑠衣　　　（あっけらかんと）ごめん、気がつかなかった～。
ロゼ　　　レスの女王も気づかなかったか～。関係者席の隅っこにいたのにぃ～。
瑠衣　　　そうだったんだ～。もう、来るなら、連絡してよ～。
ロゼ　　　ももを驚かせたかったって感じ？佐永さんも、ご無沙汰してます。
蘭々　　　ああ、どうも。
ロゼ　　　水上さんは……？
瑠衣　　　あれ、そこで寝てたんだけど。
蘭々　　　トイレじゃない？
月瓶　　　迷ってないわよね。
瑠衣　　　あるかも～。ここ無駄に広いし。
ロゼ　　　（瑠衣に）そうそう！さすが箱が大きいから控室もいくつあるのって感じ？（ハッとして）はしゃいで、すいません。
瑠衣　　　いいよー。
蘭々　　　リリカのことだからメイクさんのところで駄弁ってるのかも。
ロゼ　　　いいなあ。こんな大きな会場。私もいつか立ってみたいな～。
蘭々　　　うちのオープニングアクトでもやってみる？
ロゼ　　　わあ、光栄です～。月瓶さん、うちの社長に言ってくださいよ～。
月瓶　　　蘭々。
蘭々　　　ひっ！（怯える）
月瓶　　　いつからそんな偉そうな口を聞くようになったの？
蘭々　　　ご、ごめんなさい。
月瓶　　　ちょっと売れてるからって驕ったら終わりよ。
蘭々　　　はい。
月瓶　　　フェスに初めて出た時の光景を忘れたとは言わせないわよ。
瑠衣　　　誰も立ち止まってくれなかったっけ。
蘭々　　　もちろん忘れていませんよ。
月瓶　　　蘭々はちょっと目を離すと、思い上がるところがあります。
蘭々　　　はい。
　　　　月瓶と佐永のやりとりの間に、瑠衣は水上の席に置かれた手紙に気がつく。手に取るが、月瓶と佐永のやり取りに気を取られて開封せずに持っている。
月瓶　　　桜山さん、不愉快な思いをさせてごめんなさい。
ロゼ　　　全然！全然ですよ！いや、天下のフェイキーゴールドさんのオープニングアクトを務められるんなら、もう本望っていうか。
月瓶　　　今売り出し中のユニシスさんからそう言っていただけるとありがたいです。でも、オープニングアクトなんて……。
瑠衣　　　そうそう。ユニシスさんにオープニングアクトじゃ力不足だよ！
　　　　月瓶こめかみを手で押さえる。
瑠衣　　　……あれ？
月瓶　　　それを言うなら「役不足」です！重ね重ね、うちの者が申し訳ありません。

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