あなたへ。
あなたへ。
登場人物
女
(店員)
〇歌声Bar
舞台中央に丸テーブル、その後ろに椅子が2つ並んでいる。
中央後方には、小さなステージ。
ステージ上に照明がつき、女がマイクをもって立っている。
歌。
歌が終わり、照明が全体的に明るくなっていく。
ありがとうございました。
(移動しながら)ありがとう。ありがとうございました。え、本当ですか?うれしいです。引き続き楽しんでいってくださいね。
あ、元田さん。今日も来てくれてたんだ。
ううん、そんなことないよ、うれしい。いつもありがとうね。
え? ……うん、じゃあ、失礼して。
元田に誘われた女、仕方なくとなりに座る。
何か飲む? 分かった、飲み方は? うん、水ね。了解。
(袖に)水炊き鍋1つ入りましたー。
私? 私は……今日はいいかな。うん、無しで。
ね、それより、今日はどうだった? 歌。
えー本当? やった。元田さんに褒めてもらえると嬉しい。
……うん。あーなるほど。低いところは、お腹から。そっか、そこが。
うん、気を付ける。
やっぱり、元田さんって詳しいね。
ねぇ。元田さんって、本当に……ううん。やっぱりなんでもない。
何でもないって。
あ、来たよ。
店員登場。土鍋をテーブルの上に置き、ふたを開ける。
(鍋を覗きながら)わぁ、いい匂い。でしょ?
ふふ、うちの看板メニューですから。
店員、懐から小さい封筒を取り出し、女に渡す。
私? あぁ、いつもの。ありがと。
店員退場。
ん、これ? なんか、よくくれるお客さんがいてね。そう、ファンレター。
うれしいんだけどさ。いつも直接渡してくれなくて。
そう、お店の人経由でね。だから、顔も見たことない。
えー、今はいいよ。
後で開ける。 後にするってば。
ねえ、そういう言い方はよくないと思う。
会ったことないけど、この人だって私の大事なお客さんなんだから。
……ごめん。けど、……うん、ありがとうね。
それより、温かいうちに飲まないの? 鍋。ささ、グイっと。
あーちょっと、大丈夫?
そうだよね。あはは、もうちょっと冷めてからにしようか。
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