はるかの話
「はるかの話」     

【登場人物】
秦野はるか
大学四年。英文学科の大学生。テニスサークル。高校時代は陸上部。そこで順一と出会い、付き合うようになる。出版会社に就職が決まっている。喫茶店でアルバイトをしている。
秦野敏文
はるかの父。50歳。電子機器会社の経理。部長。はるかは一人娘。
秦野礼子
はるかの母。46歳。専業主婦。敏文とは、会社で出会う。結婚を期に退職。
町田順一  
はるかの恋人。社会学科の大学生。高校時代はボードゲーム研究会。はるかとはサークルで出会う。サークル長。就職は、文具メーカー。
町田美里
順一の母。医療事務。順一は一人息子。


第一幕  

【音響】 「raindrop keep falling n on my head」 C・I
【緞帳】 音響が入った5秒後に開ける。
【照明】 地明かり

リビング 四人用のテーブルと四つの椅子
後ろには戸棚、カウンターキッチン
下手手前にテレビ台。
ごく普通の家庭の、ごく普通のリビングダイニング
今日、順一が初めてはるかの実家に挨拶に来る。
敏文と礼子は、そわそわ落ち着かない。
礼子はテーブルを拭いたり、カウンターに行って洗い物をしたりと忙しい。
礼子はカウンターの奥ではるかとその彼氏が来る準備をしている。敏文は落ち着かない様子で、新聞読む。頭に入ってこない。ふとビデオをみることを思いつく。ビデオを取り出し再生をし、懐かしそうに眺めている。

【音響】 「raindrop keep falling n on my head」 F・O

礼子  お父さん。
敏文  ん?
礼子  お父さん!
敏文  なんだ。
礼子  これ、拭いてくれる。(布巾を投げる)
敏文  ああ。(テキトーに拭いている)
礼子  ちょっと。
敏文  何?
礼子  ちゃんと拭いてください。
敏文  拭いてるよー。
礼子  もう。子供じゃないんだから。
敏文  何が。
礼子  今日は、大事な日なのよ。
敏文  わかってるって。
礼子  ちゃんとしてくださいね。
敏文  ……
礼子  やっぱり会うの嫌なの?
敏文  別に。
礼子  別にって。私は嬉しいけどなー。
敏文  何で?
礼子  恋人を紹介したいって……何かうれしいでしょ?
敏文  そうか?
礼子  そうよ。まあ、好奇心もあるけど。
敏文  母親は気楽でいいな。
礼子  何?父親は気楽じゃないって?
敏文  当たり前だろ。一人娘だぞ?
礼子  まあ、気持ちもわからなくはないけど。
敏文  はー。なんだかなー。
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