迷信を信じすぎた男
【迷信を信じすぎた男】
作 宝井 直人
登場人物 課長(小野寺)
部長(久保田)
社員1(佐藤)
社員2(鈴木)
(部長室に部長と社員1,2がいる)
部長 知っての通り、今回のプロジェクトは失敗し、我が部署の売り上げの3割を占める大口顧客をも失った。
今回、我が社が被った被害額は、経営そのものが傾く程だ。
社員1 ・・・申し訳ありません
社員2 申し訳ありません
部長 ・・・上はこれを重く受け止めており、部の縮小を決定された・・・わかるな
社員1 ・・・申し訳ありません、申し訳ありません、それだけは、それだけは、来月、子供が生まれるんです
社員2 ・・・
部長 ・・・今月いっぱいで引継ぎの準備をしろ・・・以上だ
社員1 久保田部長、申し訳ございません、もう一度、どうか、どうか
部長 甘ったれるな、あんな失態を犯して懲戒免職にならずに済んだんだ!俺がどれだけお前らを庇ったか!
社員1 ・・・申し訳ありません、申し訳ありません
(部長室に課長がはいってくる)
部長 小野寺さん
小野寺 部長、部下の責任は上司の責任です。
部長 小野寺課長、既に話はしたはずです。
小野寺 確かに、佐藤と鈴木は取り返しのつかない過ちを犯したかもしれない。しかし、こいつらに仕事を任せる
判断をしたのは私です。それに、人的コストの削減というのであれば、月単価で言えば二人よりも俺の方が
高いはずです。コスト面で言うなら私を切る方が合理的ではないでしょうか。
部長 それは認めません。これは上の決定なんです
小野寺 部長
部長 ・・・
小野寺 確かに、佐藤と鈴木はまだまだ半人前かもしれない。けど、初めから一人前な人間なんてどこにもいません
私達だって似たような失敗はたくさん経験してきました。今回はただ、運が悪かっただけなんです。
もう一度、彼らにチャンスを与えてはくれませんか。すぐに結果は出ないでしょう。しかし、近い将来
必ず、こいつらは立派なサラリーマンになって、この会社の貴重な財産になるはずです。
私に未来はない、だが、彼らには未来がある、可能性と言う名の未来が。可能性とは希望の象徴。
だから、彼らではなく、私を切ってください・・・部長・・・久保田
部長 ・・・小野寺課長・・・いや、小野寺さん。自分はあなたのおかげでここまで来れました。あなたを失い
たくはない。これからも、会社には、私には・・・あなたが必要なんです。
小野寺 ・・・もう、俺の命、長くはないんだ
3人 (各々驚く)
部長 どういうことですか
社員1 長くないって
小野寺 ああ・・・(部長に向かい)だから、生い先短い俺が残るよりも、未来のあるこいつらが残る方が
会社にとって必ず財産になる。俺は自分が上り詰めるのは不得意だが、人を見る目だけは自信がある
久保田・・・お前の結果が何よりの証拠だ
部長 ・・・本当なんですね・・・
小野寺 ああ・・・直ぐに人事部へ連絡してくれ
部長 (ためらいながら電話に手を伸ばすが、内線ボタンを押すのをためらう)
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