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カッコウの餌食

『カッコウの餌食』

【登場人物】
○沖田昂大（おきたこうだい）：男、大学生。ダンスサークル所属。家主。
○小森昴（こもりすばる）　：男、大学生。ほぼ居候状態。
●小森愛蕗（こもりめぶき）　：女、受験生。小森の妹で実家住まい。
●畑山舞彩（はたやままい）　：女、大学生。沖田の彼女。

【イントロダクション】
中央線沿いの狭い賃貸にひっそり住み合う、二人の男子大学生――沖田昂大と小森昴。
高校からのよしみで同棲する彼らは、持ちつ持たれつの関係で、平凡な毎日を送っていた。

そんなある日。
恋人・舞彩との交際七か月記念日を控えた沖田が、「どんなプレゼントを送ろうか」と小森に相談を持ち掛ける。
飄々と意見を出していく小森だが、どれも沖田には刺さらない。
そうして助っ人に呼び出された小森の妹・愛蕗の一言を切っ掛けに、事態は思わぬ方向へ舵を切っていく。

ええ恰好しいのカッコウ同士、いっぱい食わし合う物語。

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【第一場　　函館？】

　　　　《照明　明転》

　　　　十一月。沖田の家。
　　　　沖田と小森は、腰を下ろして話し合っている。
　　　　時々顔を合わせては、また逸らしてを繰り返す。
　　　　小森はスマートフォンをいじっている。

小森　　　函館？　この時期に行くとこじゃないと思うなぁ。
沖田　　　でも変に近場行くよりかは良くない？　パーッと羽を伸ばすとか。
小森　　　寒いじゃない？
沖田　　　湯の川温泉なら暖かいよ。
小森　　　あー。えなに、行ったことあんの？
沖田　　　えっ⁉　無いよ無い無い！
小森　　　怪しいなー、誰？
沖田　　　マジで無いから。あと函館はカキとかアワビ、ご飯が上手い！
小森　　　あーカナちゃんあたりの元カノか。
沖田　　　じゃあ分かった、俺が運転する。それでドライブデート、どう？
小森　　　昂大の車？
沖田　　　いや？　レンタカーだと思う。
小森　　　（鼻で笑う）、いや――。
沖田　　　なんで、お前好きでしょレンタカー。
小森　　　聞いたことねえよ。
沖田　　　えー……。
小森　　　駄目駄目。ダメだろーこれじゃ。まずお前さ。交際期間“半年”で、温泉に行くの？
沖田　　　半年じゃねえよ、七か月だよ。
小森　　　刻むなよ。気持ち悪い。
沖田　　　でも舞彩なら絶対喜ぶでしょ。お風呂大好き、湯舟には毎日浸かってる！　って言ってた。
小森　　　それは知らんけど、普通もう少し後じゃね。あと半年くらい待って「来年もよろしくお願いします」って言いながら、背中流し合うんだよ。
沖田　　　あー背中ね。名案だわ。
小森　　　うん。――カナちゃんとも流しあったろ？
沖田　　　いや、あのお前さぁ！
小森　　　お前がカマかけに弱いんだよ。ナイナイナイィ！ってすげえ顔。
沖田　　　（溜息）
小森　　　あぁあと、レンタカーはケチくさい。ここまで来たら、車買おうぜ。

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