猫おじさん
猫おじさん
カンマ
ミク
ラグドウ
カンマが正面を向いて語り。
カンマ カンマセイイチロウ、46歳、独身。スコティッシュコーポレーションで会社員をしています。家族のいない独り身なので自宅と会社と往復する毎日。趣味もこれと言ってないのでただ淡々と仕事をこなしていくのが私の人生です。と、思っていたある日、私が目を覚ますと・・・。
ミクの自宅。カンマが寝そべっていてミクが話しかける。
ミク すずちゃん、すずちゃん。
カンマ ・・・。
ミク すずちゃん、朝だよ。起きて~。
カンマ んん?
カンマが上体を起こす。
ミク あ、やっと起きた。おはよー。すずちゃん。
カンマ すず、ちゃん?
ミク すっごい眠そう。も~すずちゃんはほんとにお寝坊さんなんだから。
カンマ あの、どちら様でしょうか?
カンマが正面を向いて語り。
カンマ 目を覚ますと、私は全く知らない部屋に横たわっていました。それだけではありません。全く知らない女の子に「すずちゃん」と全く知らない名前で呼びかけられています。頭の中がごちゃごちゃになっていると、身体に大きな違和感を感じました。いつもの身体と違う気がする。恐る恐る手を見てみると肉球がありました。どうやら私おじさん、猫になってしまったようなのです。
カンマがミクに声をかける。
カンマ あの、すいません。あなたは一体誰ですか?
ミク お、いきなり元気になった。ほんとに気まぐれさんだよね~猫って。
カンマ 気まぐれさんだよね~じゃなくって。あなたは誰なんですか?なんか、どこかで会ったことがある気がするんです。名前だけでも教えていただけないでしょうか?
ミク どうしたどうした~今日は一段と元気に鳴くじゃん。
カンマ、正面を向いて語り。
カンマ 駄目です。どうやら私がなんと語り掛けても彼女にはニャ~としか聞こえていないようです。いったいどうすれば・・・。と思っていたのもつかの間。さらなるピンチが私を襲いました。まずい。寝起きだからすごいトイレ行きたくなってきた。でもこの場合どこですればいいんでしょうか?猫だからやっぱり猫用のトイレでするべき?でもあの女の子の前でトイレするのはさすがに恥ずかしい。だからと言って今の私に人間のトイレが使いこなせるのだろうか?いっそのここでしてしまおうか、いやそれはだめだ。考えれば考えるほどトイレに行きたくなってきます。どうしようどうしようどうしようあ~もう!
カンマ、超ダッシュではけ。
ミク あ、ちょっとすずちゃん?
水の流れる音。
カンマ、ほっとした表情で戻ってくる。
ミク すずちゃんもしかしてあのトイレでトイレできたの?
カンマ ええ、まあ、なんとか。
ミク うへぇ!すごいね~。さすがすずちゃんだ。よしよしよしよし~。
カンマ 年頃の女の子に頭を撫でられるなんてなんか恥ずかしいな。
お腹の鳴る音。
カンマ あ。
ミク あ、まだご飯用意してなかったねごめんごめん。ちょっと待ってて。
ミク、はけ。
カンマ こんな体になってもちゃんとお腹は減るんだな。いつもなら小腹がすいたら自分でお菓子を開けてつまんでいたが、今はそんなことできない。情けない。
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