自動販売機
自動販売機
ムトウ
モモコ
タカナシ
リンゴロウ
ムトウ、正面を向いて語り。
ムトウ ムトウカンタ、22歳。田舎から上京してきて4年、彼女ができたことがない、いや、生まれてからこれまで一度も彼女ができたことがない。このままでは華の学生生活、一度も彼女と過ごさないまま終えてしまう。それだけはなんとしてでも避けたい。そう思い立った俺は、人生で初めてナンパを決行することにした。
駅前にある広場。モモコがベンチで誰かを待つように座っている。
その横には自動販売機が設置されている。
ムトウがキョロキョロしながらモモコに近づき、声をかける。
ムトウ ねえねえお姉さん、かわいいね?
モモコ え、あ、どうも。
ムトウ もしかして今一人?
モモコ え、いや。
ムトウ え、どう見てもひとりじゃん?
モモコ あ、その。
ムトウ いや、わかるわかる。俺にはわかる。遊び相手を探してるんでしょ?
モモコ いや、えっと。
ムトウ 俺と、付き合っちゃわない?
モモコ は?
ムトウ そうだよね。いきなり付き合うのは変だよね。だからさ。今から俺と遊ぼうよ。
モモコ 嫌です。
ムトウ も~そんな冷たいこと言わないでよ。じゃあさ、今から俺と遊ぶかどうか、運命に任せてみない?
モモコ 運命?
ムトウ そうそう。そこに自動販売機あるじゃん?もしもこの自販機でジュースを買って、当たり出たら俺と遊んでよ。
モモコ いや~。
ムトウ いいじゃんいいじゃん。当たりが出たらそれはもう運命だって。ね?
ムトウ、自動販売機にお金を入れる。
ムトウ 何がいい?何がいい?
モモコ なんでもいいです。
ムトウ じゃあデカビタにしよっか。
モモコ はあ。
ムトウ、願いを込めてデカビタのボタンを押す。
ガタンと音を立ててデカビタが出てくる。自動販売機の数字が回り始める。
ムトウ 当たれ当たれ当たれ・・・。
しかし、外れる。
ムトウ (すごく悲しそうに)ああぁ。
モモコ去ろうとする。
ムトウ 待って待って待って。
モモコ なんですか?外れましたよね?
ムトウ いや、外れた。
モモコ もう運命じゃないですよこれ。
ムトウ 外れた。外れたけど、これは俺の分だから。まだ、君の分が残ってる。
モモコ は?
ムトウ 君、喉渇いてない?
モモコ 渇いてないです。
ムトウ 渇いてないか。いや、でもいいよ。なんかジュース買ってあげるよ。
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