大道具を壊す
大道具を壊す

あらすじ
 毎年地区大会止まりの弱小演劇部は、気合を入れて臨んだ今年も例年通り地区大会で敗退した。結果発表の翌日、大会に使った大道具を片付けるために部員たちが練習場所である体育館の舞台に集まってくる。そこから、反省会と称した愚痴大会が始まる。
 全国大会に出場する演劇部がとりあげられる、「青春舞台」という番組があります。でも、実際の高校演劇の世界では、大多数の学校が「地区落ち」して、最初の大会である地区大会(地域によっては県大会)が最初で最後の舞台になります。なので、ほとんどの演劇部員にとっては、そここそが「青春舞台」です。そんなリアルな「青春舞台」の後日譚。充実した設備がなくても上演できます。

劇中劇の『銀河鉄道の夜』は 宮沢賢治(1988)『新編 銀河鉄道の夜』新潮社 より引用。


登場人物 
千明 2年、部長、キャスト。    
里香 2年、演出、キャスト。             
紗季 2年、舞台監督。                
美幸 2年、キャスト。      
恵  2年、キャスト。
佳音 2年、音響。
朋花 2年、大道具。 
香織 1年、キャスト。     
由奈 1年、キャスト。                 
明里 1年、照明。舞台監督補佐。            
沢田先生 顧問の教員。

1場 大会翌日の朝 部員たち舞台に集まる
緞帳が開くと舞台はホリ幕が飛ばされ、舞台はむき出しの状態。演劇部が練習をしている体育館の舞台。荷物が雑然と置かれていてもよい。照明は作業灯。舞台上に置かれたCDプレーヤーから大音量で悲しげな音楽が流れている。舞台上では、千明、紗季、朋花、由奈が大道具を下手の袖から持って来て1カ所にまとめている。佳音はCDプレーヤーの前の床に座って肘をついている。里香はホウキとチリトリを持って舞台を掃除している。美幸は舞台上に大の字になって寝転がっている。香織と恵はいない。

里香   ちょっと!美幸!佳音!あんたたちも手伝いなよ!美幸あんた朝一番最初に来たんでしょ!いつまでアザラシみたいに転がってるのよ!
美幸   無理―。今年は絶対いけると思ってたのにさー。ショックすぎ。
佳音   私はこの敗戦処理の作業にぴったりなBGMをかけてあげていたつもり。
里香   敗戦処理って・・・。どうせならもっと明るい曲流してよ!余計落ち込むでしょ!
佳音   了解〜。

佳音はCDを入れ替える。

里香   ほら!美幸は運ぶの手伝って!
美幸   無理〜。

里香は美幸の腕を引っ張って起こそうとするがグルグル回るだけで起き上がらない。

CDプレーヤーから今度は馬鹿みたいに陽気な曲が流れ始める。

里香   よし。じゃあこのままモップ掛けしよ!

里香は美幸を引きずって床掃除をする。

美幸   イタタ!ちょっと里香何すんのよ!やめてよ!
里香   掃除しないなら、掃除道具として使ってやる。
美幸   わかったよ、やるってば・・・。

美幸起き上がる。

美幸   佳音もほら、一緒にやるよ。
佳音   はいはい。

美幸と佳音も大道具を運ぶのを手伝い始める。以下の会話は大道具を運びながら。

美幸   ねえ部長〜。恵と香織ちゃんは?
千明   恵はさっき遅刻するってライン来てた。今日なんかダルいから遅れるって。香織ちゃんはわかんない。
里香   まったく、恵こんな日も遅刻かよ。
紗季   こんな日だからでしょ。そりゃあ、地区大会で負けた翌日なんて誰でもやる気なくなるって。
里香   まあね〜。でも恵はいっつもじゃん。千明、部長としてもうちょっとガツンと言った方がいいんじゃない?もう今更だけどさ。
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