チグとハグ
藍色の夜空に、輝線を引いて星が流れる。
  幾つも、幾つも。
  
  この流星群を見るたび、何度願っただろう。
  
  あなたにあいたい。
  
  願いは叶えられる事は無かった。ずっと。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  チグ「君は全く分からず屋だなぁ!」
  
  痺れを切らしたように頭を掻きむしる仕草をしながら、我楽多が叫ぶ。俺が黙っていると、今度は地団駄を踏み始めた。
  
  チグ「旅をするなら一人より二人の方が良いに決まってるだろ?!現に君が我楽多兵士に壊されかけた所を助けたのに感謝のひとつもないのかよ!?」
  ハグ「別に頼んでない」
  チグ「助け合いって言うのは頼まれたからするもんだけじゃないんだよ!それに助けられたら礼ぐらい言うべきだろ!」
  ハグ「……ありがとう」
  
  言われた通りに礼を言うと、我楽多は一瞬キョトンとしてから、慌てて頷く。
  
  チグ「えっ、ああ、うん。どういたしまして」
  ハグ「これでいいか。話は終わりだ」
  
  そう言って背中を向けた俺に、叫びながら我楽多が抱きつく。
  
  チグ「あああっ、まだ終わってないだろぉ!!話は最後まで聞けよ!」
  
  冗談じゃない。構わず歩き出すが、我楽多は離れようとしない。
  
  ハグ「し・が・み・つ・く・な、離れろ…っ」
  チグ「ぜっ・た・い、離さんからなぁぁ…!」
  
  何歩か我楽多をしがみつかせながら歩いたところで、俺は足を止めた。話を聞いてもらえると思ったか、明るい表情で我楽多がひょいと立ち上がる。
  
  チグ「僕の名前はチグだ!この世界に捨てられたばかりでまだわからないことだらけだが、僕の目標はただひとつ!神様に会うこと……って、あああ!!」
  
  チグとやらが何か語りだした頃には、俺は駆け出していた。後ろから叫ぶ声が聞こえるが、知らない振りを決め込む。
  
  俺を振り回すのは、この世界で一人だけで十分だ。
  
  
  
  
  
  
  
  チグ「我楽多兵士は危険だ。君もそう思うだろ、ハグ」
  ハグ「ハグってなんだ。誰だ」
  チグ「君が名前も教えてくれないから勝手に呼ぶことにした。チグとハグ。チグハグ。なんかいいだろ」
  ハグ「チグハグって噛み合わないって意味だろ」
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